作品タイトル不明
63「都さんのパパやばくね?」②
千手の停止の魔眼によって、七森家当主康弘と長男英智がトイレで停止して数年の間、七森家当主妻である七森久乃が当主代行として七森家を取り仕切っていた。
しかし、分家を見下し、フリーの霊能力者を軽んじ、周辺に住まう人たちとの交流も上からだったので失敗している。
康弘が当主に戻ると同時に、最初にしたことは、久乃の拘束と蟄居を命じたことだ。
「まさかとは思うが、あのおばさんと水無月俊平がデキていたなんてことはねえよな?」
「ぶっちゃけ、興味はないが……水無月俊平の興味は水無月茅とその娘都だけだ。自分の思い通りにならないと暴れるおばさんなんかに手を出しやしないだろう。仮に出していたとしたら、良い離婚理由になる」
康弘が悪い笑みを浮かべる。
千手の記憶にある、側近と悪巧みしている時の康弘の顔だった。
「というわけで、千ちゃんが懇意にしている水無月家がピンチなることは絶対にないけど、もしかしたら水無月俊平が水無月家に接触するかもしれないというパパからの注意喚起でした! きらっ!」
「うぜぇ! ていうか、直接言ってやれよ! 不仲とはいえ連絡先くらいしっているだろ!」
「……七森家の電話を水無月家が着信拒否しているから」
「…………スマホ買ったんだろ」
「連絡先なんて覚えてないよぉ! しくしく!」
「本当っ、にうぜえなぁ!」
いい歳のおっさんが、いちいち、きらっ、とかしくしく、とかリアクション取るのは非常に鬱陶しい。
千手は握った拳を、父親の顔面に叩き込みたくなったが、深呼吸して耐える。
「というか、あのおばさんもなんでそんな役に立たない男を匿ったんだ?」
「推測だが……久乃は、水無月都を英智か淳也の結婚相手にしようと企んでいたようだ」
「……無理だろ」
「無理かどうかは問題じゃないのさ。昔から、家と家のつながりは、結婚が手っ取り早い。しかも、水無月家よりも七森家の方が力がある。ならば、結婚させてしまえば、こっちの勝ちだ」
「くだらねえ。家としての力は七森家があるかもしれないが、単純な戦力なら水無月家のほうが上だぞ」
「そうなのぉ?」
「……神や魔族、天使と懇意にしているからな」
「噂では聞いていたけが、すげえな水無月家。七森家も……あ、いや、そんな縁はいらないなぁ。かつてのパパなら喉から触手が飛び出すほど欲したかもしれないけど、綺麗になった今のパパは権力には興味ないし……田舎でスローライフしたい」
「もう嫌っ、このおっさん!」
父と子の楽しい会話を邪魔せずに見守っていた虎童子は、
「あ、もしもし? はい、はーい。じゃあ、そのコースで。七森でお願いしまーす」
夕食のステーキハウスの予約を取っていた。
――この後、みんなでステーキめっちゃ食った。