作品タイトル不明
62「都さんのパパやばくね?」①
「さて、真面目な話をしよう」
七森康弘はソファーに座り、真面目な顔をした。
「……三十分もテンション高くてうざすぎたおっさんが今さら真面目な顔をしても何にも雰囲気出ねえだけどなぁ」
「ちょっと、千ちゃん! そういうこと言っちゃらめぇ!」
「うぜえ! つーか、なんであんたは向島市にいたんだよ!」
「ほら、アルフォンスさんというイケメンが営んでいる食堂のご飯が美味しすぎて……モリモリ食べて満足して千ちゃんが虎童子ちゃんと夫婦の営みっているかなーってこっそりマンションの前でにやにやしていたらメッセージがきたから」
「…………俺は絶対突っ込まないからな!」
千手は拳を強く握り締め、震えながらもツッコむことはしなかった。
してしまえば、目の前のおっさんは調子に乗る。
間違いなくかまってちゃんであるとわかっているからだ。
「……それで、だ。水無月俊平って奴に関して教えてもらおうじゃねえか」
「パパが忠告しておきながら、こういうことを言うのは少し躊躇っちゃうが、取るに足らない雑魚だ」
「雑魚かよ」
「雑魚の中の雑魚だ。むしろ、雑魚に申し訳ないくらいに雑魚だ」
「どれだけ雑魚だよ」
「――そして、水無月茅の夫であり、水無月都の父親だ」
「――やっぱりそうだったか。この辺の水無月はだいたいあの家の縁者だ。嫌な予感はしていたんだよ」
「え? ダーリン、さっぱり心当たりなかったような気が」
「……虎童子。話が終わったらうまい肉を食べに行こうな」
「やったー!」
まったく予感とかしていなかった千手は、無理やり誤魔化した。
「というか、どうして今さら水無月家の旦那が帰ってきてるんだよ。いや、違う。なぜ家の外に出ている? 娘がみずちの生贄になるかならないかと一族総出で頭を抱えていたというのに」
「そこが水無月俊平が雑魚以下である証拠だ」
「ちゃんと説明しろよ」
「……パパも人の悪口を言うことは……大好きだが」
「大好きなのかよ!」
「そんなパパでも話題にしたくない阿呆だ。たとえば、水無月茅が土地神みずちと相思相愛であったことは割と知られている。ふたりがわっしょいわっしょいした結果、愛の結晶と言える水無月澪が生まれているのだからな」
「……わっしょいわっしょいって、他にもっと表現があるだろ! ぼやかすにしてももっとあるだろ! というか、別に普通に言えよ!」
千手は父親の表現方法に泣きたくなった。
「しかし、水無月家としてはいろいろ限界だった土地神と当主が通じていると表向きにできない。そこで政略結婚だ」
「その辺はよくある話だな」
「ただ、相手が水無月俊平であることが、悪かった」
「どういうことだ?」
「雲海のババアや星雲のジジイが口を酸っぱくして政略結婚だ、愛はないといい含めたのにも関わらず、水無月俊平は水無月茅が自分にベタ惚れだと思ったそうだ」
「…………どうしてぇ?」
「パパ知らないもん!」
「おい、ふざけんな! ちゃんと説明しろ!」
「本当に知らないんだよ! 多分、典型的な勘違い野郎だってことだ! 当主の旦那が家から出て行ったのも、水無月茅をヤキモキさせたいからというしょうもない理由だぞ!」
「はぁ!?」
「挙げ句の果てには、土地神みずちが倒されたのを、水無月茅が自分のために倒してくれた、これで障害がなくなったって大喜びしていたんだからね!」
「……あ、絶対関わっちゃダメな奴だ」
「きんもー」
千手も虎童子も、話で聞いただけなのに、水無月俊平という人間に気持ち悪さを覚えた。
「ていうか、どうしてそこまで詳しいんだよ」
「……黙秘権を行使します」
「言えよ! 面倒臭えおっさんだな!」
忠告してきたことといい、知らないと言う割には水無月俊平に関して詳しいことから、間違いなく七森康弘が何か関わっていると千手は察した。
康弘は、上目遣いで千手を見た。
「あのね、七森家が匿ってたの」
「はぁああああああああああああ!?」
「千ちゃんにパパが停止されていたせいで、あの女が好き勝手やっていたの。そのひとつが、水無月俊平を匿って水無月家を貶めようとしていたの」
「……俺のせいじゃないよな?」
想像していなかった事情に、千手が顔を引き攣らせた。