作品タイトル不明
59「由良さん家は歓迎じゃね?」①
「もうっ、夏樹ったら。もっと早く連絡くれていたら歓迎会の準備をしていたのに!」
「てへっ、ごめんね!」
「今度から気をつけなさいね!」
春子は、星子と菜々子を熱烈歓迎すると、急な訪問にもかかわらずまるで気にしていない。
むしろ、もっと早く連絡しなさいと、夏樹に怒っているが、どうも怒る箇所が微妙に違うのだ。
「さあさあ、入って入って」
「お、お邪魔します」
「よろしくお願いします」
「まあまあ、どこかのやんちゃ息子と違って礼儀正しいわね。自分の家だと思ってくつろいでちょうだいね!」
春子は嬉しそうにふたりの手を引いて家の中に入っていく。
「……え? お母さん? 俺の他にやんちゃ息子がいるの?」
「どう考えても夏樹のことじゃろーって!」
てしーん、とショックを受けている夏樹の頭を小梅が引っ叩いた。
「そんな馬鹿な!? 絵に描いたような優等生なっちゃんを捕まえてやんちゃだって!?」
「春子ママさんから聞いた夏樹の逸話は、やんちゃ以外の何ものでもないんじゃがのう」
「……な、なんだと」
「逆に自分がやんちゃさんじゃないと思っているのがびっくりじゃわ!」
小梅が呆れていると、銀子が苦笑した。
「やんちゃという意味では、他の星をいくつも破壊した星槍であるふたりの方がよほどやんちゃさんではあるんですけどね」
「それじゃな!」
今でこそ、力を大きく失い、星子と菜々子に分かれてしまっているが、夏樹が持つことで「鬼に金棒」である。
さすがに鬼も「ひえっ、金棒持ってもそんなに強くなりませんからぁ!」と泣くかも知れないが。
「おう、お前たち。なんというか、やばい子を連れてきたもんだな」
家の中からエプロンを身につけた魔王サタンが困惑顔で現れた。
「星子だったか、そっちの方は夏樹の部屋で会ったことはあるが……ああやって実体化するとヤバさがわかるぜ」
「俺様的には魔王サタンが、最近エプロンが基本装備になっとることの方がやばいんじゃが!」
「ママチャリものるぜ! おっと、ちゃんとヘルメットもつけてるぜ!」
「嫌すぎるじゃろぉ! 確か、高級車乗っとったじゃろう!」
「……ガソリンって高いじゃん」
「その発言が魔王から遠く離れとるとなぜ気づかないんじゃ!?」
「甘いな、小梅ちゃん。魔王は俺だ。俺の言動全てが、魔王なんだぜ」
「……エプロン装備しとるおっさんにドヤ顔で言われても困るんじゃが」
確かに、魔王サタンが最近主夫化しているのは間違いない。
近所の人たちも「やだっ、ハリウッドスターみたいなイケオジがいるわ!」と話題だったのが「由良さんちの太一郎さん……彼は良い主夫になるわね。光るものを持っているわ」と評価が変わっている。
光るものってなんだよ、と夏樹たちが悩んだのは言うまでもない。
「それで、ちゃんとあの子たちの設定を考えたんだろうな? 春子さんはこちら側に関わらせるなよ?」
「わかってるよ、サタンさん。ちゃんと星子さんと菜々子ちゃんはメキシコからの留学生って設定にしてあるから!」
「さすがに無理がありすぎだろ! メキシコからって設定なら名前もメキシコによせてこいって! あと、あの子たち、めっちゃ日本人に見えるからね! 全然設定できてないじゃん!」
「じゃあ、ニライカナイからの」
「ニライカナイは沖縄や奄美地方で信じられている理想郷であって、ちゃんと日本じゃねえから! なんでそんなギリギリを攻めるの!?」
「えっと、じゃあ、阿寒湖からの留学生でいいよ!」
「急に北に行ったな! 北海道でいいじゃん! なんで湖限定なんだよ! あと国内だから留学生じゃなくて転校生な! 俺、ツッコミの魔王じゃないから、ツッコミの勇者七森千手くんを連れてきてくれない!?」
夏樹のボケにツッコミまくったサタンが、肩で息を切らせながらこの場にいない千手を心から求めた。