作品タイトル不明
56「設定の時間じゃね?」①
「まあまあ、よくきてくれたわね。いらっしゃい、星子ちゃん。菜々子ちゃん!」
由良家の玄関で由良春子に、蒼穹の星槍と満天の星槍の星槍姉妹は歓迎されていた。
「ふたりとも話は聞いているわ。この家を、自分の家だと思って暮らしてね!」
星槍さん改め、星子となった蒼穹の星槍と、名無しあらため菜々子となった満天の星槍は、春子によって小さな身体を抱きしめられていた。
ふたりの背後で、夏樹と小梅と銀子がガッツポーズをしていた。
■
――時間は少し遡る。
夏樹の相棒である蒼穹の星槍がゴッド預かりから帰ってきたので由良家に連れて帰ろうとしたところ、やはり問題になるのは満天の星槍だ。
かつてひとつの星槍だったふたりを分けてしまうのはちょっと問題だ。
また満天の星槍も蒼穹の星槍と同じ扱いを要求した以上、由良家に連れて帰るしかない。
ふたりの受け入れに関してまったく考えていなかった夏樹たちが慌てたのは言うまでもない。
姿を消せるようだが、ならば、とせっかくなので姿を見せて受け入れてもらおうと考えた。
「ゴッド的にもいきなりすぎると難しいのでは……もう二日三日預かりますよ?」
と、ゴッドも気を遣ってくれたのだが、問題はない。
「ウチのお母さん、定期的に何か拾ってくるんで、問題ないっす! 俺も拾っちゃったって言えば、あらあらまあまあ、で済むはずっす!」
今までも、何人か何匹か由良家で一緒に生活したことがある。
夏樹も犬猫はもちろん、困っている人を家に連れてきたことは何度もあるので今さらだ。
「しっかりと受け継がれていますねぇ」
ゴッドは感心した声を出した。
小梅は夏樹に拾われた代表格だ。
その後、太一郎や銀子、ジャックとナンシー、果てにはリヴァ子までが居着いてしまった由良家だ。
少女と幼女が増えても問題ないだろう。
「ただ、設定は必要だね!」
「設定ってなんじゃ?」
「どんな理由で、どうするのかって、あとお名前!」
「……確かにっすねぇ。星槍さんと名無しさんじゃどこのどなたっすかって感じですもんねぇ」
みんなで腕を組み悩む。
「星槍の方は、前に出た槍子でええじゃろう」
「嫌よ!?」
「ええ名じゃろうて!」
「いーやー! なんかいやー!」
小梅が何気なく口にしてみるも、蒼穹の星槍はお気に召さなかったようだ。
「せめて星に寄せてよ!」
「――っ、星子さんと書いて『きらりこ』さんってどう!?」
「…………キラキラネームすぎるじゃろうて」
「さすがにそれはないっすよ」
小梅と銀子だけではなく、リリスとゴッド、アマイモンでさえ「ないわー」という顔をしていた。
「普通にありえねえな」
「うっさい、ガープ!」
「ガープさんって言えよぉ!」
「あはははは、星がきらりって発想が令和すぎるだろぉ! 力もそうだけど頭も狂ってるなぁ!」
「……あれ? 今、俺、ベヒモスさんにディスられてね?」
「まあまあ、夏樹くんがちょっと規格外なのはいつものことだから」
「あの、一登くん? それ、フォローになってなくね?」
「もろこし子という名前もありだと思うよ」
「そこでフン・フナフプさんが個性的な名前出しちゃうんだ!?」
――混沌である。
「待ちなさい」
蒼穹の星槍が、桃色の髪を揺らした。
「きらり子――ありね」
「っしゃ!」
「えぇええええええええええええええええええええええええ!?」
まさかのきらり子が、蒼穹の星槍の琴線に触れたようだ。
夏樹はガッツポーズするが、小梅たちが信じられないと叫んだ。
「待つんじゃ、星槍子! キラキラネームは後で苦しむんじゃ! ルシファーさん家の長男ピュアくんがどれだけピュアピュアいじられとると思っとるんじゃ! ピュアよりもきらり子の方がエグいて!」
「……センスないわね」
「それはおどれじゃぁあああああああああああああああああああああ!」
小梅の兄であり、ルシフェルとして魔王サタンのいない魔界を仕切るのは、ルシファー・一心。
一心とかいてピュアと読む、キラキラネームの持ち主だった。
まだ手加減されたキラキラネームであるが、いじられ対象である。
「せめて星子を普通に読むんじゃ!」
「……まあ星子も可愛いからいいけど」
「決まりじゃ!」
小梅が額の汗を拭った。
夏樹は自分のネーミングセンスがもしかしてないのではないかと落ち込んでいる。
「問題は満天の星槍さんっすね。もう面倒なんで素直に、満――」
「あかんじゃろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
銀子の口に小梅がおしぼりを突っ込んだ。