作品タイトル不明
54「花粉症の神と幸せの神じゃね?」①
――日本のとある所。
海辺にある洋風の住宅の一室で、花粉症の神は苛立ちを隠せずにテーブルを蹴り飛ばし、棚を殴り壊していた。
「由良夏樹、ルシファー・小梅、青山銀子、七森千手、虎童子め。お前たちのことは絶対に忘れない。私をコケにしたことのツケは絶対に払わせてやる」
花粉症の神は、傷ついた身体を引きずりながら、隠れ家で回復を待っている。
小梅たちと戦った個体である彼女は、花粉症の中でも一番自我が強いともいえた。
ゆえに、自分が死んでも花粉症の神が死んだわけではないので問題ないと考えている他の花粉症の神と違って、自身の自我が消えることを望んでいない。
そのため、自分を追い詰めた小梅たちに凄まじい怒りと恨みを抱いていた。
「よくわからない女に部下も殺され、UMAも新たな神話に迎えることができなかった! こんな大失態、生まれて初めてよ!」
家具に八つ当たりしても怒りが治らない。
回復を待つ時間が、我慢できそうもない。
だからといって、今の状態で再び向島市に向かったら、今度は殺されてしまうだろう。
「いいわ、ここは耐える時間よ。力を取り戻したら、ひとりずつ確実に……」
「やっほー!」
なんとか感情を抑えようとしていた花粉症の神の部屋の中に、無遠慮に少女が飛び込んできた。
ハーフパンツに、オーバーサイズのTシャツを身につけたボーイッシュな少女だ。
彼女は帽子をくるくると指で回しながら、にこり、と笑う。
「……幸せの神……あんた、何をしに」
「お見舞いに来たんだよー」
「嘘をつくな!」
「本当だよ。しかし、君も馬鹿だなぁ。どうして、要警戒の由良夏樹、ルシファー・小梅が揃っている時に、突撃しちゃうかな?」
新たな神々にとって、神や魔族と戦える人間由良夏樹と、サタンの娘であるルシファー・小梅は要注意となっている。
他にも、青山銀子、七森千手、佐渡祐介、ルシファー・花子も必要なければ関わるなとされている。
特にルシファー・花子は天使の中でも規格外の力を持ち、サタンと同等の力があるとされている。ただ、本人が表立って戦うことはないので、噂話でしかない。
そこに、新たな神々に明確な敵意を抱いている月読命がいるのだ。
人外魔境というか、ごった煮のような場所は、「近づくな危険」と認識されていた。
「月読命に泣かされて帰ってきたあんたがどの口で」
「泣かされてないからー!」
「どうだか」
「ま、いいよ。僕ってそのくらいの挑発で怒ることはしないし、一応、君も僕の大事な大事な仲間だもんね」
「胡散臭いことを言うわね」
「ひっどいなぁ」
ケラケラと笑う幸せの神を、花粉症の神は冷たい目で見る。
幸せの神は、かつて幸福の神として生まれながら、同じく生まれた幸福の神を食らった異端の神だ。
花粉症の神でさえ、仲間意識はしっかりあるというのに、幸せの神からはそれらがまるで感じない。
「それで、結局何をしにきたの?」
「そうそう! 花粉症の神って、力を増したのは結構最近だけど、存在だけなら結構前からいたでしょう?」
「そうね」
「だからさ、聞きたいんだけど……不死の神ってどこにいるの?」