作品タイトル不明
52「レベルアップの謎だけが残るんじゃね?」
アマイモンたちの出所祝いは楽しい時間となった。
途中から、各方面から叱られたアテーナーが加わり、ヤケ酒に走ろうとしてガープが止める。
フン・フナフプが穏やかにコーヒーを嗜み、ベヒモスが熱々の唐揚げを口に入れて涙目になる。
一登と杏がみんなと笑い、アマイモンが優しい顔をして見守った。
(なんていうか、異世界に行く前はどうなるかと思ったけど、帰ってきたら意外となんとかなったなぁって感じだね)
ここにはいない学校の神も、絶望の神ことぜっくんに加担して夏樹を襲っている。
しかし、今では向島市立第一中学校で萌乃萌葱として教師をしている。
何が起きるかわからないものだ。
「――由良夏樹」
「うん?」
「少し話をしたい」
「いいよぉ」
アマイモンに名を呼ばれ、夏樹は笑顔を浮かべた。
「少しふたりで話そう」
「はいよ」
喫茶店から出て、特に会話をすることなく歩く。
静かな公園に着くと、アマイモンが指を鳴らして結界を張った。
「念の為に、だ」
夏樹が昔遊んだシーソーを探すが、知らぬ間に撤去されていたことに気づき寂しくなった。
とぼとぼブランコに座ると、隣にアマイモンが座った。
「迷惑をかけた」
「迷惑なんてかけられてないさ」
「そうか。だが、中途半端な戦いをしてしまったことは謝罪したい」
「さっきも言ったけど、俺が生きている間に決着つけようぜ。約束だ」
拳を向けると、アマイモンが拳を合わせる。
「まあ、でも、しばらくは戦いを忘れてのんびりすればいいと思うよ」
「のんびり?」
「そ。訓練とか戦いとかずっとしていたんだから、違うことしなきゃ。魔族さんに人生っていうのはなんか変だけど、メリハリ付けないとね」
「ふむ。考えておこう」
「釣りなんていいと思うよ。釣った魚はガープに捌かせればいいんだし」
「なるほど。自然と一体化し、食料を確保せよ、と」
「ちげーよ、楽しめよ。なんでそこで真面目になっちゃうの!?」
天然なのか、わざとボケているのか。
夏樹がついツッコミを入れてしまう。
「ところで、由良夏樹」
「うん?」
「三原一登と綾川杏もだが、異世界で戦った時よりも少し強くなっているように見える」
「そういえばそんなことを言われていたけど、特にパワーアップはしていないんだよねぇ。アマイモンさんとガチバトルした時が、全力だったし。その全力を引き出すための星槍さんもゴッド預かりだし」
「だが新たな神々と戦ったと聞いている。実戦に勝る経験はない。ひとつひとつの戦いがお前を強くしているのだと思う」
「……美脚の神は強かったなぁ」
「……そんな神がいるのか」
「いるのよ!」
アマイモンがびっくりした顔をしている。
夏樹だってびっくりした。
他にも花粉症の神が複数体いることや、ショートカットの神、ポニーテールの神もいると教えたらアマイモンはどんな顔をするだろうか。
今ここで言ってもおもしろくないので、またの機会にしようと企む。
「ところで、アマイモンさんって……今、どのくらいの強さになったの?」
「そうだな……千年分弱体化したな」
「いや、そう言われてもわかんない――よっと」
ブランコから飛び降りた夏樹が拳をアマイモンに突き出す。
同時に、アマイモンも拳を繰り出していた。
拳と拳がぶつかり、互いの指があらぬ方向に曲がる。
「…………なるほど」
「わかってもらえただろうか?」
「うん。やべーよ! 異世界から帰還したばかりの俺より強いじゃん! 弱体化しているにはしているけどさ! 弱くはなってないじゃん! こわっ、さすがビッグネーム魔族こわっ!」
アマイモンは弱体化しても十分な力があった。
(よく考えたら、俺と戦った時には力に肉体がついていけずに死にかけていたんだよね。ってことは……あ、やっぱりガチバトルはもう二度としたくないなぁ)
こつこつと着実に強さを求めたアマイモンの全盛期はどれだけ強かったのだろう。
興味はあっても、怖いと思う。
「いずれ、あの星槍を使いこなした由良夏樹と全力でどちらかが死ぬまで戦いたいものだ」
「ひひひ、次は俺が勝つぜ」
「ははは、勝つのは私だ」
怖いと思いながらも、「いつかくるかもしれない」戦いをつい楽しみにしてしまう。
「あ! そういえば、強くなったと言われて思い当たる節があるんだけど!」
「聞かせてもらおう」
「なんか声が降ってきて、由良夏樹のレベルが上がったって言われて」
「なにそれわかんない」
「急にキャラ変わってない!?」