作品タイトル不明
50「アマイモンさんの出所じゃね?」②
「えー、僭越ながらこのガープ。アマイモン様の出所を祝って乾杯の音頭をとらせていただきます! ――アマイモン様に栄光あれ! 乾杯!」
ガープが烏龍茶が並々と注がれたグラスを掲げた。
夏樹、一登、杏も続く。
「栄光あれ! 乾杯!」
「栄光あれ! 乾杯!」
「栄光あれ? か、乾杯!」
無駄にノリの良い夏樹と一登はさておき、杏はちょっと戸惑いながらもオレンジジュースが入ったグラスを掲げた。
「――感謝する。だが、栄光は求めていない。私は再び強くなり、いや、由良夏樹と今度こそお互いに満足する決着をつけたいと思う」
「――っ、さすがアマイモン様! さすアマ! さすイモン!」
「……ねえ、ガープさん。もしかして、烏龍茶で酔ってないよね? これ、ウーロンハイだったりしないよね?」
杏が、涙を流しながらアマイモンを褒め称え出したガープが酔っているのではないかと疑う。
ガープの持つグラスからはお酒の匂いはしない。
「……杏的にはシラフでこのノリができるってちょっとびっくりかな?」
夏樹も一登もガープは気にしていない。
夏樹は、このくらいの言動自分でもするし、と思っている。
一登は、このくらいの言動は夏樹でもするし、と思っているので騒いだりしない。
リリスが揚げてくれたフライドポテトをむっしゃむっしゃと食べていた。
「ま、俺とまた戦いたいのなら、早く元気になってね」
「約束しよう」
「俺が死ぬまでに頑張ってね。人間の命は有限なんだから」
「…………そうだったな。由良夏樹は人間だったな」
「なんで今、ちょっと驚いた顔をしたの? ねえ? 俺のことなんだと思っていたの?」
アマイモンは一体、夏樹をなんだと思っていたのだろうか。
さすがの夏樹も、人間扱いされていなかったことにショックを受けた顔をした。
「いや、それは」
悲しむ夏樹にアマイモンが慌ててしまう。
そんなアマイモンに、一登が「河童の守護聖人ギャラクシー河童勇者」と書かれたカンペを掲げ、杏が必死に指差す。
ふたりの助言に気づいたアマイモンが、自然に言った。
「何を言う。由良夏樹は――河童の守護聖人ギャラクシー河童勇者であろう?」
「なーんだ、わかってるじゃない! アマイモンさんったらー! もー、やだー!」
悲しんでいた顔から一変して、にこやかな笑顔を浮かべる夏樹を見てアマイモンが安堵の息を吐く。
「くぉら、由良夏樹ぃ! アマイモン様を困らせてるんじゃねえよ!」
「困らせてねえよ!」
夏樹とガープが睨み合う。
「ふっ」
賑やかな空間を見て、アマイモンが微笑んだ。
「無心に己を鍛え強くなることが全てだと思っていたが……この賑やかな時間こそ愛おしいのだと思い出した」
命を蝕むまで己を鍛え続けたアマイモンは、心からの笑顔を浮かべていた。