作品タイトル不明
49「アマイモンさんの出所じゃね?」①
「――二度と戻ってこないように」
「お世話になりました」
リリスの喫茶店「最初の妻」の奥の席にて、後光が眩しいゴッドとアマイモンが寸劇のような挨拶を交わしていた。
「……いや、出所じゃん。ノリが出所じゃん」
喫茶店に客がいないことを良いことに、夏樹が勢いよく突っ込んだ。
今日の喫茶店は日中は休みで、夜だけ営業するようだ。
おそらく夏樹たちが来ることを見越してなのだろう。
「――アマイモン様、お迎えに参りやした」
「……ガープ、久しいな。世話をかける」
「このガープ。アマイモン様のためなら!」
びしっ、と九十度の礼をしてアマイモンを出迎えたガープは、感涙しているようで顔が涙でぐしゃぐしゃだ。
「なにこのノリ?」
「さあ……しんみりするよりはいいんじゃないかな?」
「うん。そうだよね」
夏樹、一登、杏はガープとアマイモンの再会を邪魔しては悪いと、静かにしていた。
しばらくして、ガープの肩を叩いて苦笑していたアマイモンが夏樹たちのほうに視線を向ける。
「まさか出迎えに来てくれるとは思っていなかった。久しいな」
「おひさー」
「お久しぶりです」
「アマイモン様、出所おめでとうございます!」
「由良夏樹、三原一登、そして綾川杏。元気そうで何よりだ」
手を振る三人に、アマイモンは笑顔で応えた。
夏樹とアマイモンは全力で殺し合った仲だが、久しぶりにあった友人のような雰囲気だ。
どちらにも恨みや、戦う理由はなかった。
ただ強い相手と戦いたい、それだけの理由で全力で戦ったのだ。
決着には不満は残ったが、遺恨などない。
「会っていない時間は数日だが、三人とも強くなったようだな」
「そう?」
「俺も、ですか?」
「杏も!?」
「私の目には強くなっているように見える。それと、杏よ。お前が笑って、ここにいることを嬉しく思う」
アマイモンは杏を気にかけてくれていたひとりだ。
一番、口を酸っぱくして杏の言動を注意していたのはガープだったが、アマイモンも、アテーナーも、フン・フナフプとベヒモスも杏を気遣ってくれていたと聞いている。
だからこそ、杏が一度は敵対した夏樹と一登と共に自分を迎えに来てくれたことを、アマイモンは喜んでいるようだ。
ガープも涙を流して、うんうん、と頷いている。
「――アマイモン様……うん。ありがとうございます」
アマイモンの優しい瞳に、杏は涙を浮かべてお礼を言った。
夏樹と一登は、杏が間違いなく良い方向へ変化していっているのだと確信した。