作品タイトル不明
間話「野菜泥棒は絶対に許せないじゃね?」②
――青森某所。
「……ちょっと待てい! 私が桃を育てているのは隠していないが、なぜかずたんへ渡すためのものだと」
「え? あんた、桃の世話をしているときに、かずたん喜んでくれるかなぁ、って言っているんだけど?」
「あびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃ」
「あ、壊れた」
どうやらさまたんは無意識に一登への想いを口にしていたようだ。
気持ちはわかる。
愛ちゃんも愛の女神らしく、セーターを編み、お弁当を作って、喜んでもらうイメージトレーニングはしている。
何も恥ずかしいことではない。
「しっかし、良い根性しているわねぇ。まさか野菜泥棒もネットで検索すれば出てくる魔族のいる畑から作物を盗むことになるなんて、ついていないというか、バチが当たったというか」
愛ちゃんは、呆れた。
野菜泥棒がオークションに当品の野菜を出品したりしているのをニュースで見たことがある。
「まもんまもん。さすがに犯人を捕まえないとまもんまもんですね。近所の畑もまもんまもんされる可能性がありまもんまもん」
「ぶっちゃけありえるわねぇ。防犯カメラとかないの?」
「そういえば……いくつかありまもんまもんですね?」
「じゃあ問題解決じゃない! 早速確認しましょうよ!」
マモンが防犯カメラの存在を思い出し、愛ちゃんが指を鳴らした。
これで犯人の顔がわかるだろう。
あとは警察に届けを出せば良い。
「いや、それは、実はな……」
なぜかさまたんが汗をだらだら流し始めた。
おや、と愛ちゃんとマモンが首を傾げた。
「実は、畑に設置してある防犯カメラって……ダミーなの」
「ほわっつ!?」
「まもんっ!?」
「い、いやさ、農家を始めたときには野菜泥棒とか問題になってなくて、お金もなかったからもらいもののダミーの防犯カメラを設置していてね。それでいままで何もなかったから」
「……頭痛いわ。その結果これって」
最初こそ、さまたんは畑に気を使い、意識を割いていた。
さまたんがその気になれば、畑全般に入ってくる人間の息遣いさえわかる。
ただ、最初だけだった。
次第に「大丈夫だ」というちょっとした安心と、今なら油断と言える感情が生まれた。
その後、何年もずっと問題はなかった。
――そして、今日だ。
「まもんまもん! まもんまもんまもなまもん! まもまもまもまもん!」
「慌てるな、マモン。可愛いミスをしても、このサマエル。古き魔族だ。野菜泥棒くらい、自力で見つけたるわぁああああああああああああああああああ!」
「……輝いてる! さまたんが輝いているわ!」
轟っ、とさまたんの魔力が吹き荒れる。
「畑は任せた!」
さまたんが消える。
一体なにをするのか、ちょっとくらいは説明してほしいとマモンと愛ちゃんは思った。
――三日後、青森にて大規模な窃盗団が捕まった報道が流れた。
青森はちょっと平和になった。