作品タイトル不明
43「月読先生のお願いじゃね?」③
「話は変わりますが、夏樹くん。ゴールデンウィークはお暇ですか? よかったら、のんびり旅行しませんか?」
「え? 俺と月読先生が?」
「はい。生徒と教師ではなく、歳の離れた友人として」
「……え、でも、俺と月読先生が旅行なんてしたら援助交際になるんじゃ」
月読の頬が引き攣った。
「夏樹くん、そうはならないでしょう」
「う、うん、ちょっと違うよ、お兄ちゃん?」
「そうなの? すみません、月読先生。どうも援助交際に関しての知識が浅くて」
「べ、別に気にしていませんよ。あと、援助交際に関しての知識は浅くて構いませんからね」
プルプル小刻みに震えている月読は、きっと気にしているのだろう。
一登と杏は、月読先生も大変だね、という同情の目を向けている。
「じゃあ、どうして旅行を?」
「特に、意味はないのですが、ちょっと知り合いがやっている霊能関係の学校がありましてね。遊びに行こうかと」
「……知り合いがやっているペンションとかホテルとかならわかるんですけど、霊能関係の学校って、どう考えてもさっきの話の続きで学校見学に連れて行こうって考えていますよね?」
「そんなこと……ありますん」
「どっち!?」
月読も強引であることを理解しているのだろう。
少し気まずそうな顔をしている。
「一校だけでもなんとかなりませんかね、教師に顔を見せるだけでいいので。その後、向こうからの接触はこちらでちゃんと遮断しますので」
「月読先生にはお世話にしかなっていないので、そのくらいなら、まあいいですけど」
「ありがとうございます。助かります!」
「月読先生って神様なんだから、上からオラついて言うことを聞かせればいいのに」
「あー、それはですね。私はあくまでも霊能関係者の教師ってことになっているんですよね。おそらく、霊能関係者からは月読命を崇める一族かなにかだと思われているはずです」
「その結果、大変なんですね」
「はい。大変なんです。とはいえ、今の私は神としてではなくあくまでも人間として生きて生活をしているので、こういう苦労もありきで楽しいですよ」
そう言って笑顔を浮かべる月読に、夏樹たちもつられて笑顔を浮かべてしまう。
しかし、夏樹は月読の力の一端を見ている。
今でさえ、底知れぬ力を持つ月読が、本来の神としての力ではないというのだ。
一体全体、神としての月読命はどれだけの力を持っているのだろうか。
興味を抱いてしまうのは仕方がないことだった。
「よかったら、一登くんも一緒に学校見学はいかがですか?」
「えっと、俺はまだ中学二年生なので」
「早くはありません。それに、夏休みには学校見学があるじゃないですか」
「もしかして、俺のこともいろいろバレちゃっている感じですか」
「……少しだけですよ。夏樹くんの噂の裏付けをする過程で、ちょっとバレちゃいました」
「……夏樹くん?」
「俺のせいじゃないでしょう! よし、こうなったら、霊能関係の学校をすべて更地に!」
「しないでください!」
「駄目だからね!?」
本当に更地にしそうな夏樹に、月読と一登はかなり真剣に止めた。
「杏さん。あなたも気をつけてくださいね」
「杏も、ですか?」
「はい。ガープ殿たちと関わるなと言うつもりはありませんが、どこかでばれてしまいます。それに、あなたから魔力を感じられますからね。もう少し力を抑えましょう。方法を教えるので、気をつけたほうがいいです」
「ありがとうございます。お願いします」
「いえいえ、いいんですよ。――可愛い生徒を導くのは教師の役目ですから」