作品タイトル不明
42「月読先生のお願いじゃね?」②
以前、月読と進学についての話をしたことがある。
霊能関係の学校があることも知っている。
夏樹としては、霊能関係者になるつもりはない。
――由良夏樹はあくまでも一般人なのだから。
「……お世話になっている月読先生ですから、最後まで聞きます」
「……ありがとうございます。霊能関係の学校から、一度見学に来てくれないかと連絡がありました。どうでしょうか?」
「――嫌です!」
最後まで聞いても、夏樹の答えは変わらない。
こういうのは、少しでも応じてしまうと次から次に要求がエスカレートしてくるのだ。
以前、訪問販売がしつこかったときに、「せめてチラシだけでも」と言われたので「どうぞ」と言った。
すると、後日、「せめてお顔を見てお話しさせてください」と調子に乗ってきた。
これはつけあがるなと思ったので、「お腹痛い」と言ってなんとか撃退した。
だが、次も来た。居留守を使うと「いるんでしょ!」と明らかに舐めていたので、全力ダッシュで追い回してやった。
これは訪問販売と同じだ。
月読先生がしつこくしないとわかっていても、先方は「お、いけるんじゃね?」と少しでも思ったら要求を増やしてくるだろう。
――そんなことされたら、もうその学校を更地にするしかない。
「そう言うと思っていましたよ」
月読は苦笑した。
「あの、月読先生。どうして夏樹くんをそこまで入学させたい学校があるんですか?」
「いい質問です、一登くん」
一登の素朴な疑問に、月読が答えてくれる。
「まず、水無月家が祀っていた土地神みずちを殺したことは、隠しきれません。人間が神を殺すというのはそれだけ大変なことなのです」
「……あ、割と最初の方のことがきっかけなんですね」
「ははは、もちろんその後のこともバレているところにはバレていますよ」
「やっぱり」
そもそも神殺しは人間にはリスクが高い。
人間と神とではスペックの違いが大きいことが一番ではあるが、土地神みずちの場合は弱体化していた。
それでも強かったが、問題は殺した後だ。
神を殺せば、呪われる。
穢れを受ける。
などという迷信がある。
いや、実際そういう代償を支払った神殺しもいた。
夏樹のように、神を殺そうとピンピンしている人間の方が稀だ。
これはひとえに、みずちが夏樹に死という解放を与えられたことに感謝していたこともあるが、単純に夏樹が強すぎて神殺しの代償を弾いてしまっていたのだ。
「夏樹くんのことだけじゃありません。一登くんをはじめ、異世界で新たな神々と戦い殺している皆さんは各組織、各家に喉から手が出るほど欲しがられる存在です。新たな神々と戦える実力、神々、魔族との交流があること、どれひとつでも霊能力者が生涯をかけて成し得ないことなんですよ」
「……そんな、こんなに神様とか魔族さんとかわらわらいるのに!」
一登の驚きに、夏樹と杏が「うんうん」と同意する。
杏ですら、ガープ、アマイモン、アテーナー、フン・フナフプ、ベヒモスと知り合いだ。
霊能関係者が神々とまったく無縁ということは信じられなかった。
「気づいていないだけで接点があったりするんですよね。ほら、私も神ですが、水無月家の方々は気付きませんでしたしね。そんなものですよ」
「もしかすると、俺たちが気づいていないだけで、もっと近くにビッグネームがいるかもしれないってことだね! ……あ、なんかお外出るのが怖くなってきた」
夏樹は珍しく青い顔をした。