作品タイトル不明
41「月読先生のお願いじゃね?」①
――時間は少し遡る。
早朝。
佐渡祐介は、ベッドでむにゃむにゃと眠っていた。
彼の隣には、婚約者のソーニャ・シラーが気持ちよく寝ていた。
異世界に比べて、地球の日々は快適だ。
ソーニャは異世界から来て数日で、日本にすっかりのめり込んでいる。
祐介とはもちろん、家族との関係も良好だ。
「ソーニャちゃんのおかげで孫が見れるのね」と喜んだ義母のために、昨晩も限界までハッスルしている。
――佐渡祐介のレベルが1上がった。
「むにゃむにゃ」
どこからともなく声が響くが、祐介は気づかない。
ソーニャにはそもそも声を聞く『資格』がない。
――佐渡祐介のレベルが1上がった。
「もう食べれないよぉ……」
ベタな寝言を呟きながら、ソーニャに頬擦りする祐介にはやはり声が聞こえない。
――佐渡、祐介の、レベルが、1、上がった。
声が、少し力を込めた気がした。
しかし、祐介には届かない。
幸せそうに眠っている。
――佐渡祐介のレベルがっ、1上がったっ!
「むにゃむにゃ……はぁはぁ、ソーニャたん萌」
どんな夢を見ているのか、だらしない顔をした祐介に大声になった声はやはり届いていなかった。
――…………。
少し間があった気がする。
――佐渡祐介のレベルアップを取り消す。
――連帯責任で由良夏樹もレベルアップしない。
声はそう言い残した。
その後、声はまるで響かない。
「むにゅむにゅ……ソーニャたんっ、はぁはぁ」
祐介は幸せそうに眠り続けた。
■
「……夏樹くん、ここにいたんですね。ちょうどよかった、少しお話が。――おや?」
昼休みを持て余した夏樹たちは、猫の動画を見て癒されていた。
そこへ現れたのは、月読先生だった。
月読は、夏樹と一登はともかく、そこに杏が一緒にいることを意外に感じたようだ。
しかし、彼女の身に起きたことも把握しているので、特に何かを言うことはしない。
過ちを認め反省したのであれば、教師として見守るだけだ。
「あ、月読先生」
「こんにちは」
「こ、こんにちは」
「はい、こんにちは。もう昼食は終えていますか?」
「はい。お腹いっぱいです」
「それはよかった。楽しそうに動画を見ているところを申し訳ありませんが、少しお時間をよろしいですか?」
「もちろんです! お世話になっている月読先生のためなら、サタンさんが危篤でも後回しにします!」
「魔王が危篤になることなどまずないと思いますが……どうも」
月読も、夏樹たちと一緒にビニールシートの上に座った。
アイテムボックスのおかげで、屋上で快適に過ごしている夏樹たち。
さすがにレジャー用の椅子を持ってきたら叱るのだが、ビニールシートくらいでは何も言えない。
「さて、夏樹くん。以前もお話ししたかもしれませんが」
「はい?」
「実は霊能力者の学校から」
「――お断りします!」
「………………」
夏樹は月読の言葉を最後まで聞かず、断った。
「最後までお話し聞いてあげてよ」
一登が呟き、杏も頷いた。