作品タイトル不明
39「杏も学校に来たんじゃね?」②
夏樹にとって、アマイモンは好敵手である。
雷神トールも素盞嗚尊も、神として強敵であったが、あくまでも「戦い」の中の話だ。
彼らが神代の時代に行った「殺し合い」であれば、夏樹は負けていただろう。
今なら、それなりによい勝負ができると考えているが、二度と戦うのはごめんだとも思っている。
しかし、なんだかんだと言って、夏樹は神々にどこまで自分の力が通用するのかとも考えてしまう。
そういう意味では、わかりやすく敵として異世界で戦ってくれたアマイモンの存在は特別だった。
最後の最後で、夏樹が勝ったのではなく、アマイモン自身に限界が来てしまっただけ。
立っていた方が勝者であるが、夏樹としては納得ができない。
現在、誰よりも決着をつけるべき相手である。
「アマイモンが出所するんだ。シャバに出てきた祝いでパーティーでもしようか。サタンさん持ちで」
「……夏樹くん、サタンさんに逆らったアマイモンさんのパーティーをサタンさん持ちっていうのはどうかと」
「気にしないと思うよ」
「気にしないだろうけどさ!」
なんなら、青森からサマエルとマモンも呼んでみたいとも考えてしまう。
「結局、アマイモンってどうなるの? その辺はなんか聞いている?」
「う、うん。あのね、ガープさんとアマイモンさんは向島市で暮らすんだって」
「なんで!?」
「杏にも……わかんない。ゴッドさんがそう決めたみたいだよ?」
「……ゴッドめ。アマイモンさんはさておき、ガープまで」
「もうとっくにガープさんは向島市で暮らしているけどね」
「そういえば、雑魚だからって早々に釈放されていたよね」
杏は、言い辛そうに言葉を続けた。
「あとね、アテーナー様と、ベヒモスさんも向島市で暮らすんだって」
「だから、なんで!?」
「えっと、アテーナー様は、月読先生が保護観察するみたい、だよ?」
「月読先生大変だなぁ。ていうか、杏さんはなんでそんなに情報通なの?」
「……ガープさんから連絡が来たあと、授業で寝ちゃったんだけど」
「うん」
「夢の中で、眩しいくらいに輝くゴッドさんが現れ」
「ゴッド、フットワーク軽いなぁ! 女子中学生の夢の中に出てくるとか、セクハラじゃね!?」
夏樹が叫んだと同時に、スマホが震えた。
ゴッドから「セクハラじゃありません」とメッセージが届いていた。
「こわっ、ゴッド見てるじゃん!」
「……夏樹くんがそういうこと言うのをすべて想定していたんじゃないの?」
ははは、と一登が笑って、ようやく杏も笑った。
少しは肩の力が抜けたのかもしれない。
「あと、フン・フナフプさんがご紹介よろしくお願いしますって言ってたみたい」
「うん。それはちゃんと覚えているからへーきへーき」
夏樹はフン・フナフプとの戦いを避けるため、北海道のとうもろこし農家を紹介すると約束している。
先日、母にこっそり聞いてみたら、今でも人材募集のようで、危うく夏休みにお手伝いに派遣されるところだった。
きっとフン・フナフプを受け入れてくれるだろう。
「あ、あの、お兄ちゃ……あ」
「お兄ちゃんでいいよ。なに?」
「う、うん。お兄ちゃんも一登も異世界に行ったし、勇者になったでしょう」
「今さらどうしたの?」
「そうだね、本当にどうしたの?」
なぜそんなことを聞くのだろうか、と夏樹と一登が首を傾げた。
すると、言いにくそうにしながらも、杏が躊躇いがちに続きの言葉を言う。
「――レベルアップってした?」