作品タイトル不明
間話「野菜泥棒は絶対に許せないじゃね?」①
――青森某所。
ビニールハウスを前にして、さまたんは怒りに震えていた。
「――絶、許」
あまりにも怒っているのか、言葉がきちんと出てことない。
これほどの怒りを覚えたのは、かつてサタンと戦っている古き時代に、情報戦で「サマエルの足は臭い」と噂を流された時以来だ。
年頃の乙女になんたる所業と、ブチギレたことがある。
それ以来の怒りだ。
「――誰だ! 私が丹精込めて育てたアスパラを盗みやがったのは!」
ビニールハウスの中で育てていたアスパラガスの大半が盗まれていたのだ。
雑に引き抜かれて収穫され、土は踏み荒らされている。
野菜だって命だ。
我々は、命を育て「いただいている」のだ。
愛情を持って育て、感謝を持って食すのだ。
それを盗むなど、言語道断。
「――ゆ゛る゛さ゛ん゛」
いったい誰がこんなことをした。
新たな神々か。
新たな神々に決まっている。
きっと野菜泥棒の神とかいるのだろう。
ならば、落とし前をつけてもらうために、太陽の神を殺そう。
封印されているとか知ったことはない。
「まもんまもん……さまたん様」
「マモン、出るぞ」
「まもん!? さまたん様!? オーラが、魔王レベルのオーラがまもんまもんと出ておりまもんまもん! 離れているとは言え、周平たちや作物に影響がまもんまもんしてしまいまもんまもん!」
「――っ」
マモンに言われ、サマエルは大きく息を吐き感情と魔力を落ち着かせる。
「アスパラガスたちの仇を取らなければならない」
「……まもん」
「ゆえに、新たな神々のトップである太陽の神を殺す」
「――まもん!?」
なぜそうなった、という顔をするマモンだが、さまたんはビニールハウスの中を見ていて気づかない。
「あ、あの、まもまもん、さまたん様」
「なんだ?」
「野菜泥棒をされたのは、このマモンもまもんまもんと遺憾ですが、なぜ太陽の神をまもん殺すとなるのでしょうか?」
「ちっ、これだからまもん野郎は」
「まもんまもんを悪口につかわないでくださいまもんまもん!」
悲しい、と涙をハンカチで拭うマモンにさまたんが面倒くさそうに説明を始めた。
「私の推測だが、新たな神々の中に野菜泥棒の神がいるはずだ」
「……まもん? それはつまり野菜泥棒の想いから生まれたまもんまもんな神ということでよろしいでまもんまもん?」
「そうだ!」
「そんなまもんまもん! いるわけないでしょう、そんなまもんまもんな神は!」
「いーや、愛ちゃんみたいに愛の女神のくせに芋ジャーが似合いすぎる女神がいるんだ! 絶対変わり種で野菜泥棒の神がいるはずだ!」
「ちょっと!? 芋ジャーが似合いすぎる女神とかいうのやめてくれない!? 風評被害すぎるんですけど!」
遊びにきていた愛ちゃんが、芋ジャーに長靴を履いた姿で抗議する。
その姿は、本当によく似合っていた。
「……芋ジャーの神、愛ちゃんか」
「ふざっけんな! そうじゃなくて、大変よ!」
「アスパラガスが盗まれた以上に大変なことがあるのか!?」
「あるわよ! 他の畑も!」
「――――――あ゛?」
「さまたんが一登きゅんの好感度を上げるためにこっそり育てている桃もやられているわ!」
「あじゃびょぴりにゅのもありぬせりぬもにゅ!?」
――後にマモンは語る。
――こんなまもんまもんなさまたんの奇声は初めて聞きまもんまもん。