作品タイトル不明
33「新たな神々もだんだん雑になってね?」①
「な、何をするんだ!」
「ゆ、幽霊か!」
「うるせえ! お前ら、新たな神々だろ!」
夏樹が問答無用で殴りつけたのは、近づいてきた気配が新たな神々の気配だったからだ。
「――な、なぜ」
「ほら、やっぱり! もしや首なしエロ本ライダーさんを狙って」
「なにそれ!? よくわからないが、誤解だ! 私たちは、善良な新たな神々だ!」
「本当にぃ?」
「月読命にもちゃんと挨拶して、生活する許可をもらっている!」
「……うーん、なんかなぁ、怪しいんだよなぁ」
中年男性ふたりは、ひとりはベリーショート、もうひとりはポニーテールにし、同じジャージを着ていた。
どここかで見たことのあるジャージだが、思い出せない。
「あれ? そのジャージって、隣の中学の」
「ああ! それそれ!」
一登が気づき、夏樹も思い出した。
二人が来ているジャージは、向島市立第三中学校のジャージだ。
「なるほど……つまり、ジャージの泥棒か」
「発想が斜め上だよ! 違う! 私たちは、陸上部のコーチだ!」
「――どういうこと?」
ふたりの神は立ち上がり、砂埃を払うと、堂々と胸を張り名乗った。
「私はショートカットの神!」
「俺はポニーテールの神!」
「…………タイム!」
夏樹たちは円陣を組んだ。
「ねえ、殺した方がよくね? 中学生が関わったらやばそうな神なんだけど。絶対変な神だって」
「なんじゃ、ショートカットとポニーテールの神って舐めとるじゃろう。それならツーブロックの神とかおってもおかしくないじゃろうて」
「なんというか、どんな人間の思いから生まれた神様なのかよくわかんねえっす」
「ど、どんな思いからでも、微妙そうって思うかも」
「人間って怖えなぁ」
「べぁべぁ」
「ほら、熊童子が怖がっちゃってるだろ!」
「まあまあ、なっちゃん。変な神であることはしゃあないとして、なんで神さんがこんな廃トンネルに来たのかの方が問題やと思うんよね」
「そうだね。とりあえずぶっ飛ばして、情報を吐き出させよう」
夏樹たちは円陣を解いた。
「とりあえず、ぶっ飛ばす」
「待ちなさい!」
「暴力は良くない! 最初に言っておくが、俺たちは新たな神々ってだけでかなり雑魚だ!」
「……えっと、謙遜?」
「違う! 雑魚の中の雑魚だ! ちょっとやんちゃな高校生が前から歩いてきたら、道を開けて下を向くほど雑魚だ!」
「なんか悲しい!」
新たな神々なのに、雑魚を堂々と自称するふたりにちょっと涙が出そうになった。
「んで、なんでそんな雑魚の神がこんな廃トンネルにきたの? エロ本は落ちてないよ!」
「そんなもん探しにきてない!」
「俺たちは、生徒のためにちょっと調べにきたんだ」
「生徒?」
「陸上部の生徒が、暖かくなったから肝試しやりたいって言い出したんだよ。夏は試合があるから、遊んでいられないから、今だけちょっと息抜きしたい」
「そこで私たちが、下調べにきたんだ」
「……話のわかるコーチだなぁ」
しかし、夏樹は疑問に思った。
「なぜ陸上部のコーチやってるの?」
両者は、髪型に纏わる神だ。
なら美容学校とか、美容師とか他になにかあったはずだ。
なぜ、陸上部のコーチなのか、わからない。
「よくぞ聞いてくれた!」
「そう! 厳密にいうと、俺たちは!」
神々は誇るように言った。
「陸上部ってショートカットが一番だよね! って想いから生まれた、ショートカットの神!」
「ポニーテールこそ陸上部だよ! って想いから生まれた、ポニーテールの神!」
「つまり!」
「陸上部限定の髪の神なのだ!」
「どうでもいいわぁあああああああああああああああああああああ!」