軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

30「首なしライダーに視界があるのっておかくしくね?」

「――ようこそ、みなさん! 僕の家へ!」

「………………」

「うわぁ、緊張しちゃうな。初めて誰かを招いたので、へ、変なところあったら言ってくださいね!」

うきうきしている首なしライダーのケヴィンの家に招かれたのは、夏樹と合流した仲間たちだ。

だが、みんな口を開けて言葉がない。

「………………」

「あ、あれ? どうかしましたか?」

恐る恐る訪ねてくるケヴィンに、代表して夏樹が答えた。

「……ここ、廃トンネルじゃん!」

「はい! 廃トンネルです!」

ケヴィンの家は、廃トンネルだった。

夏樹が生まれるよりも前に、隣町と繋ぐトンネルを作ろうとしたが、何か良くないことが立て続けに起きたことで工事が中止になったことで有名な廃トンネルだ。

このトンネルが完成しなかったので、山をぐるりと回るように隣町に続く道ができたのだ。

まさか山道に現れる首なしライダーが、廃トンネルまで占拠しているとは思わなかった。

「誰も使っていなかったので、家にしちゃいました。僕だって、雨の日は転ぶのが怖いのでバイクに乗れませんし、台風の日は雨風から身を守りたいです」

「……不法占拠じゃん」

「人間には見えないのでギリギリセーフということでひとつ」

確かに、霊感がある程度なければ見えないかもしれない。

今のケヴィンは「見せよう」としていない。

バイクに乗った首なしライダーであるケヴィンは「見せている」ので霊感がなくとも見てしまっているが、今のケヴィンは他の幽霊などのように一般人には見えないだろう。

「都市伝説っていうか、地縛霊だなぁ」

「ははは、そうかもしれません。さあ、どうぞどうぞ」

招かれてトンネルの奥に入っていくと、ソファーやベッドが置かれていた。

「隠れる気ないじゃろう!」

「なんでソファーとベッドがあるっすか! よく見たらカーペットまで敷いてあるじゃないっすか!」

「し、親切な方が、山の中に投げてくれたんです」

「不法投棄じゃ!」

「あとでその場所教えてくださいっす! 犯人見つけて絞めるっすから!」

さすがに電気はないが、ケヴィンの周囲に浮かぶ人魂みたいな炎がうっすらトンネル内を照らしてくれているので視界はある。

千手の顔が、いつもよりも青白く見えるのは、きっとケヴィンの炎のせいだと思いたい。

となりで虎童子がホクホク顔で千手を支えているのも、夏樹は気遣いができる紳士なので見て見ぬふりをした。

「あ、そうだ! せっかくのお客様なのでジュースでも買ってきますね! 少し待っててください! ちょっとコンビニまで!」

「行かなくていいから! 首なしライダーがコンビニ来たら大事件だから! カラーボール投げられちゃうよ!」

「そ、そんな、首なしライダーってだけでそんな迫害を受けるんですか?」

「首がない不審者だからだよ! ちょっと、この人、面倒くさいなぁ!」

夏樹はアイテムボックスから冷えたお茶や炭酸飲料、コーヒーを取り出し配る。

「これでいいでしょう?」

「お客様に飲み物をいただいてしまってすみません。せめて、――乾杯の音頭をさせてください」

「ノリがええのう!」

「では、この素敵な出会いを祝して乾杯!」

「はーい、かんぱーい!」

夏樹たちは、ケヴィンに視線を向けた。

首なしライダーである彼は、いったいどこから飲み物を飲むのだろうか。

夏樹たちの視線に気づかないケヴィンは、炭酸飲料を首元に持っていくと、だばだばと首の中に流し込んだ。

「そこから!?」

「胃に炭酸が沁みますねぇ!」

「胃があるの!?」

「フィーリング的に」

「意味わかんないよ!」

「さて。そろそろ、僕が首なしライダーになった話をしましょう」

「急に真面目な話をしようとするのやめて! 温度差、温度差がしゅごいのぉ!」

急に真面目な雰囲気を醸し出したケヴィンは、夏樹のツッコミを気にせず自身の過去を語り始めた。