作品タイトル不明
間話「ハイスペックだから良いってわけじゃなくね?」
――青森某所。
古の時代。
呪われた武器や武具を手にして取り囲む敵対魔族たちに、サマエルは嘲笑った。
「これだから腕に自信がねえ奴は。魔族なら、強者なら、武器なんかに頼ってんじゃねえよ! 自分の肉体ほど強いもんはねえだろ!」
その言葉通り、武器を持って勝った気になっていた魔族たちは、すべてサマエルによって無に返された。
「はぁ。だる。ったく、物に頼るんじゃねえよ、雑魚共が」
■
――そして、令和。
早朝の一仕事を終えて、朝食の時間。
「……おい、マモン」
「まもん?」
「なんだ、これは!」
テーブルに置かれている家電量販店のチラシが並べられており、パソコン関連の場所に赤マークが引いてある。
「気づいてしまもんまもん」
「気づくさ! 目の前にこれみよがしに置いてあるからね! ていうか、これ、私が前に欲しがったパソコンじゃん! なに、買っていいこと!?」
「マモンとしては、スペックに頼るのはどうかと思いまもんまもんですが、なんと今なら様々なソフトが付いてくるとのことで、お値引きも含めてまもんまもんとお安いので……まあ、さまたん様が買いたいのなら、いいのではないでしょうかまもんまもん」
「……なんか、怪しいな」
炊き立ての白米、カブの味噌汁、たくあん、納豆、のり、卵焼きを並べていくマモンはなぜかさまたんと視線を合わせない。
「私がパソコン欲しいって言った時に、調子乗んなって言ったくせに。急にどうした?」
「ま、まもん? このマモン! 敬愛するさまたん様に対して、そんなことを言ったことはありまもんまもん!」
「敬愛しているなら、さまたん様って呼ぶなよ! 最近、お前のせいで近所の人たちにもさまたんって呼ばれているんだけど! 周平たちもさまたんさんだぞ! もう自分でも名前がサマエルなのかさまたんなのかわからなくなってきたよ!」
「さまたん様が信じるさまたん様でいればよいのでまもんまもん」
「意味わかんねえから!」
いただきます、と朝食を食べ始める。
せっかくの温かい食事を冷ましてしまうのは嫌だ。
「んで、何が目的だ。今なら何か企んでいても怒らないから言ってみろ」
「……まもんまもん。それは怒ることが確定しているお母さんの定型文でまもんまもん」
「いいから話せ」
「……まもん」
マモンは諦めたように、話し始めた。
「まもんまもんまもんまもんまもんまもんまもんまもんまもんまもんまもんまもんまもん」
「ふざけんな! 今のまもんまもんに言葉が込められていないことくらいわかるんだよ! ちゃんと言え!」
「……実は、先日のさまたん様のまもんまもんな黒歴史書籍化計画なのでまもんまもんですが」
「おま、まもんまもんな黒歴史とかいうと私がまもんまもんしたみたいだからやめて!」
「そうではなくまもんまもん……さすがに黒歴史を暴露するようなことはこのマモンとしても良くないとおもいまもんまもん。亜子さんにも、めっ、って言われてしまいまもんまもん」
「私の黒歴史をダシにしていちゃついてんじゃねえよ」
「というわけで、まもんまもんとさまたん様に新たに黒歴史を執筆していただけないかと思いまもんまもん!」
「おい、こら。なんで書く前から、黒歴史って決まってんだよ!」
「――まもん?」
「いや、本当にわからないって顔をするんじゃねえよ!」
さまたんとしては遺憾である。
確かに、かつての小説は黒歴史だ。
仕方がない。
だが、今なら結構いい感じのものが書けると思っている。
「だがなぁ、問題がなぁ」
「なんでまもんまもん?」
「いやさ、私も常に進化しているんだよ」
「まもん?」
「つまりさ、もうこのパソコンじゃダメなんだよ! もっと高性能なパソコンが欲しい!」
「…………………まもん」
マモンはさまたんに何をどう言えばいいのか悩み、適切な言葉が出てこず、静かに朝食を続けた。
「いや、なんか言えよ!」