作品タイトル不明
29「勇者なら攻撃じゃなくて会話じゃね?」
「もうひどいですよ! 髪の毛がアフロヘアーになっちゃったじゃないですか!」
「…………おかしいなぁ。髪の毛どころか、頭さえ見えないんだけど。もしかして馬鹿には見えない頭とかいうオチなのかなぁ?」
結構、全力で『神鳴りの剣』を振るったのだが、首なしライダーのケヴィンは無事だった。
いや、間違いなく手応えはあったし、消し飛んだことは間違いない。
だというのに、またこうして目の前にいたのだ。
不思議である。
夏樹はいろいろ面倒くさくなったので考えるのをやめた。
「んで、結局あんたはなんなの?」
「よくわからないんです」
木々が薙ぎ倒され、地面が剥き出しになった山中で月の光を浴びながら夏樹とケヴィンは正座をして向かい合っている。
「――実は、ケヴィンというのも仮名なんです」
「でしょうね! 日本語ペラッペラだもんね!」
「しかし、本名もわかりません」
「だから首なしライダーさんでしょう?」
「元人間なんです。あれは、まだ僕がバイクの免許を取ったばかりの頃でした……」
「あ、回想入る? 入っちゃう?」
「調子乗って運転して事故って死にました」
「回想しないんだ。別にいいけど」
「ただ、事故る直前に、何かに身体を掴まれた気がします」
「急なホラー!」
何者かによって、殺されたのであれば人間が首なしライダーになってしまうのも、仕方がないこと――なのだろうか、と悩む。
異世界には首なしライダーはいなかった。
夏樹によって、首なしになった人間は数えきれないほどいたが。
「そうか……あんたにもいろいろあるんだな」
「はい」
「んじゃ、さくっと成仏しておこうか」
「待って待って待って! その展開はおかしいでしょう!」
「なんで?」
「無駄にしんみりして友達になってくれるルートはないんですか?」
「無いかなぁ」
「ひどい!」
「ケヴィンくんと友達になってもメリットが」
「友達になるのにメリットデメリットを考えるなんて……これだから最近の子は!」
「さすがにどういう反応すればいいのかわからないや」
意思疎通はできるが、顔がないといまいちやりづらい。
ただ、悪人ではないと思う。
問答無用で殺す、というのもさすがの夏樹も少々良心が痛む。
「一応、聞いておくけどデュラハンさんじゃないよね?」
「でゅ? なんですか、それ?」
「知らないならいいよ」
「知りませんとも! そんな妖怪だか聖霊だかわからない首なしライダーの派生品みたいなやつは!」
「知ってるでしょう!? 俺、デュラハンしか言ってないからね! 説明してないからね!」
「――っ、しまった! 誘導尋問でしたか!」
「してねーよ! なんか疲れるな、この人!」
「――え、私のことを人って言ってくれるんですか?」
「本当に面倒くさいな!」
「す、すみません。みんな僕のことを見ると絶叫をあげて逃げてしまうので、こうやって会話が弾むのが嬉しくて」
「あー」
夏樹もファンタジーを知らなければ、首なしライダーに話しかけられたら絶叫をあげて逃げ出す自信がある。
ファンタジーを知っていても、これでもかと驚いたのだから、他の方々が逃げ出すのも仕方がないことだ。
「とりあえず、ここじゃなんですし、一般人も来てしまうかもしれません。よかったら、僕の家に来てください」
「――お家あるの!?」
さすがにびっくりした。