作品タイトル不明
間話「美脚と河童となっちゃんじゃね?」
とある日。
由良夏樹と三原一登は河川敷の階段に座ってハンバーガーを食べていた。
ふたりとも制服姿だが、学校には行っていない。
現在進行形で、水無月都から「さぼってないで学校に来てください」とメッセージが来ている。
「ねえねえ、夏樹くん」
「うん?」
「夏樹くんって昔から妖怪とかUMAとか悪霊とか怨霊とか好きじゃない?」
「一登もそうじゃん」
「うん。うちのクソ兄貴を攫ってくれないかなって」
「……何も言えねー」
一登の境遇を考えると、怪奇現象に兄貴を攫ってもらいたい気持ちは十分すぎるほど理解できた。
今はもういない三原優斗の存在がどれだけ一登の負担になっていたのかわかる。
「それで、どうしてそんなに好きだったの?」
夏樹は、過去を思い出すように目を細めた。
「えっとね、昔――とんでもねえ美脚を見たのよ」
「待って、美脚関係あるの?」
「あるよ! 今説明するから、ちょっと待ってね。ほわんほわんほわんほわんわほん〜」
「それ……回想シーンが始まる時の音?」
「ちょ、静かに回想シーンが始まるよ!」
まだ夏樹が小学校6年生だった頃の話だ。
幼い頃に見た美脚が忘れられず、美脚の君を探していた。
だが、見つからない。
脚ばかりに気を取られ、肝心な美脚の持ち主の顔を見ていなかったのだ。
差し詰め、シンデレラに出てくる王子様のように夏樹は美脚に恋焦がれていた。
その日も学校をサボって美脚を探し、見つからなかった。
もう何年も、夏樹を美脚好きにした美脚と再会できず、あの脚を超える美脚とも出会っていない。
夏樹は、心にぽっかりと穴が空いた気分だった。
今日も、いつも通り、一登をいじめる高校生をボコボコにしてズボンを奪ったり、学生手帳と一緒にアヘ顔ダブルピースをさせて撮影するだけの味気ない日だった。。
そんな夏樹が河川敷を歩いている時だった。
御御足を思い返しながら、夕陽に照らされて河川敷を歩いていると、小石につまづき河川敷を転げ落ちた。
「――あ」
川の中には不法投棄と思われる錆びた自転車がある。
このままでは大怪我をする、と目を瞑ったとき、
「大丈夫か、ボーイ?」
バリトンボイスが素敵な、三頭身の河童さんが夏樹を抱き抱えて助けてくれた。
「――ぽっ」
「待って待って待って待って待って! 夏樹くんが美脚のことばかり考えていたのも初耳だし、河童さんと邂逅していたのも初耳なんだけど!」
「そりゃ言ってないよ! 恥ずかしいじゃん!」
「前者はね!」
「美脚は恥ずかしくねえよ!」
夢だとは思っていない。
あの日、出会った河童さんは間違いなくいる。
天使や魔族がいるのだ。
河童さんだっているさ。
でも、まだ、あの日の河童さんとは再会できていない。
きっと、河童大神様の遣いだったのかもしれない。
「いつか再会してちゃんとお礼を言いたいなぁ」