作品タイトル不明
27「夜の山道って怖くね?」①
「由良ぁ! 走れ! お前なら、ギャラクシー河童勇者であるお前なら、大型バイクだろうと追いつける!」
「――千手さん、俺のことギャラクシー河童勇者って」
生まれたての子鹿のように膝を震わせる夏樹に、同じく膝を震わせる千手が拳を差し出す。
ふたりの拳が重なる。
――ぱんっ、と膝を叩いて夏樹は喝を入れる。
「由良夏樹、いきます!」
「いってこい!」
夏樹が地面を蹴った。
「走れ! 走れ、由良ぁ!」
魔力で肉体を強化する。
足に力を入れる。
一歩一歩を全力で踏み込む。
由良夏樹は、風となった。
■。
夏樹は追いかける。
首なしライダーのバイクを追いかける。
規格外の魔力を全て身体能力に変えて全力で走った夏樹はすぐに首なしライダーのテールランプを見つけた。
「とまれやぁああああああああああああああああああああ!」
攻撃する前に親切に声をかけたというのに、バイクは速度を上げた。
「いい度胸だぁああああああああああああああああああああ!」
気遣いを無下にされた夏樹は怒りでさらに早くなる。
ついに山道を法定速度を超えたスピードで走るバイクに並走した。
「よう!」
「ひぇ」
怖いを通り越して、今はただどこから声が出ているのか不思議だ。
「これが最後だ。止まれ」
「……止まったらどうします?」
「殺しはしないと約束する」
「殺す以外のことするつもりだ! いやぁあああああああああああああ!」
うぉん、とバイクがさらにスピードをあげる。
「ちょ、待て! なぜ話し合いって思わないんだ!」
「だって、目が、目が怖い!」
「な、なんだと!? 向島市一番の紳士と呼ばれるこの俺に!」
「嘘だぁ! 絶対妖怪かなにかだぁ!」
「待てやぁあああああああああああああああああああああああああああ!」
いくつかカーブを曲がると、下り坂となる。
夏樹としては、話が聞きたいので斬り捨てるつもりはない。
というか、全力ダッシュしているのでうまく剣が振るえるかわからない。
――ならば頼れるのは己の肉体だけ。
「本当に最後の最後だぞ! とーまーれー!」
「いーやーでーすー!」
最後まで抵抗の意思を見せた首なしライダー。
いいだろう。
ならば、強制的に止めよう。
「せっかく都市伝説系の存在だから優しくしてあげたのに! もういいもん!」
ばちっ、と雷が拳に宿る。
「ギャラクシーエクスプロージョンまもんまもんフォーエバーデンジャラスウルトラ――キック!」
夏樹は全力で、首なしライダーのバイクの前輪を殴りつけた。
バイクが宙を舞った。
「それ、パンチ」
そう言い残して首なしライダーは吹っ飛びガードレールの向こう側の山中へ。
「っしゃ! あ、やべ、止まれない! ちょ、助け」
ガッツポーズをしたものの、下り道で勢いがつき過ぎた夏樹は、速度を落とすことができずにガードレールに突っ込んで、山中に飛んでいった。