作品タイトル不明
26「首なしライダーの声がどこから出ているか不思議じゃね?」
『それ』はライダースジャケットを身につけ、ジーンズにブーツを履いていた。
身長は、夏樹ほどだろう。
『それ』の背後には、低い排気音を唸らせる大型バイクがある。
「こんばんは。僕は首なしライダーのケヴィンといいます」
どこから声を出しているのか不明だが、首なしライダーは割と気さくに喋りかけてきた。
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「出たぁあああああああああああああああああああああああああああ!」
「ぎゃぁあああああああああああああああああああああああああああ!」
夏樹と小梅が叫んだ。
「ひぇえええええええええええええええええええええええええええ!?」
なぜか首なしライダーも叫ぶ。
「いや、なんで首なしライダーさんが驚いているっすか!?」
冷静ではいられないが、まだなんとか突っ込む気力のある銀子が震えながら尋ねる。
「え? 急に大きな声を出されたら驚くじゃないですか」
「そりゃそうっすけど」
「それに、さっきから強い魔力が蠢いたり、雷がどかーんとか、叫び声がして……とっても怖かったんです。でも、勇気を出して騒音の注意に来て」
「……まさかの首なしライダーさんがビビっていた件」
「び、ビビっていないですかぁ! ここの公衆電話に昔から何人もの人を襲う怨霊がいるからって、ビビっていないですからぁ!」
「めっちゃビビっているっすね。ていうか、公衆電話に怨霊がいたんすね」
「そうです! そこの公衆電話に……って、ない!? 電話ボックスごと、なくなっている!?」
首なしライダーは、怨霊が取り憑く公衆電話がなくなっていることに驚いたようだ。
顔は見えないが、ジェスチャーと声は驚いている。
どこから声がでているのだろうか、と一同が思う。
「皆さん、気を付けてください。先ほどの恐ろしい力の持ち主がどこかにいるはずです。おそらく、魔界から這い出てきた高位魔族かもしれません」
「いや、あの、申し訳ないっすけど、それは自分たちっす」
「へ?」
「察してくださいっす! なんか強い力を持っている子が騒音を出していたんすよ!」
「つまり」
「やあ! 僕、由良夏樹! ホラーは好きだけど、実際の心霊現象にガチでビビった中学生! ただいまこの怒りをどこの誰にぶつけようか思案中だよ!」
「…………………」
ばちばち、と雷を纏いにっこり笑顔の夏樹が首なしライダーの背後にいた。
「よう、俺は七森千手だ。クールなお兄さんキャラを維持するはずが、急な心霊現象にビビって気絶したせいで優しい視線が辛いんだが……この怒りをどこにぶつけていいのか教えてくれや」
もうひとり、首なしライダーの背後には、笑顔なのに目が笑っていない千手がいた。
気絶したものの、すぐに意識を取り戻したようだが、虎童子たちの視線で隠していた秘密がバレてしまったことを察したようだ。
「……僕は悪くないですよね? あの怨霊が悪いんですよね?」
「そうかもしれないけど」
「俺たちがここに来たきっかけはおまえさんなんだよなぁ!」
「り、理不尽だ! 僕はただ、楽しく山道をバイクで攻めながらたまーにカップルっていいなーって羨ましいと思っていただけなのに! あ、でも、車を止めていちゃつく邪魔なカップルにはホラー映画の法則に則って襲っているけど! 基本的に無害な首なしライダーなのに!」
首なしライダーは逃げ出した。
「とう!」
素早くバイクに跨ると、バイクを唸らせ発進する。
「夏樹と千手が逃したじゃと!?」
「そんな!?」
首なしライダーを逃してしまったことに驚く。
いつもなら、ここでぶった斬るか、止めるかしているのに。
「あ!」
一登が気づいた。
「夏樹くんと千手さんの膝が震えている!」
――そう。
夏樹も千手も、心霊現象にビビり、首なしライダーにもビビっていたのだった。