作品タイトル不明
24「ホラーは映画の中で十分じゃね?」①
「しっかし、雰囲気のある山道だな。俺は向島市の人間じゃねえが、いかにも出そうな場所だ」
山道の入り口には、バスの停留所と灰皿、そして電話ボックスが置いてある。
わかりやすい、ちょっと田舎の幽霊が出そうな場所、だった。
電子煙草を咥え、千手は内心を悟られないように小さく深呼吸を繰り返す。
(やべえ、首なしライダーなんてどうせ妖怪かなんかだろうと思っていたが、雰囲気がやべえ。これは出そうだ)
首なしライダーは、最近こそ聞かなくなったが霊能力者の中では今も話題に上がる。
事故で亡くなった人間や、ひき逃げにあった人間の恨みが、わかりやすく一般人にも見えるように首なしライダーという形となる。
他にも、白いワンピースの女性や、もっとシンプルに事故にあった被害者のその当時の姿のまま事故現場に立っていることもある。
(幽霊に形はねえ。あるが、ねえんだ。幽霊は想いによって姿形を変える。だから、俺たちは幽霊が元に戻れるうちに払ってやるのが一番なんだが)
千手も霊能力者だ。
人を相手にすることが多かったが、幽霊関係も対処してきた。
――結果として、幽霊は苦手だ。
――怖いと言ってもいい。
夏樹にバレないように強がってみたが怖いものは怖いのだ。
かつて、千手は幽霊を払おうとした。
幽霊の背景は気にしなかった。
聞きもしない。
知れば、同情してしまう場合があり、そのわずかな情が命取りになってしまうからだ。
除霊は、まず会話を試みる。無理なら、強制的に払うしかない。
しかし、千手がいくつか請け負った除霊は、どれもこれも最悪だった。
幽霊があまりにも憎悪に包まれているので会話が成立しない。
払うことも難しい。
なんとか無理やり、除霊を成功させて見れば、依頼者が加害者であるとわかった時は最悪の気分だった。
とある一家を襲った幽霊騒動。
家族に霊障が起きてしまい、子供が原因不明の意識不明となってしまう。
千手がなんとか除霊を成功させると、家族は安堵し、感謝を述べ、幽霊になった生前の人間を口汚く罵った。
聞けば、幽霊となり一家を襲っていた男は、その一家の父親だった。
しかし、不倫され、親権を奪われ、あれよこれよと自分が悪者になり、命を失った。残ったのは、復讐しかなかったのだ。
いつだって人間が醜く怖いことは知っていたつもりだったが、改めて人間の悪意に恐れた。
それ以来、千手は幽霊が苦手だった。
(新たな神々でも、魔族でも、神様でもなんでもいい。お願いだから、幽霊だけは勘弁してくれ!)
千手が心から願った時、
じりりりりりりりりりりりりりりりりりり。
公衆電話が鳴った。
■
公衆電話が鳴る。
そんな光景を夏樹は初めてみた。
まるでホラー映画のワンシーンだ。
怖い。
夏樹も幽霊は怖い。
「――はい! こちら由良夏樹です!」
「なんで、出とるんじゃ!?」
「夏樹くん、メンタル鋼っすか!?」
「ちょちょちょ、夏樹くん!? 名乗って大丈夫なの!?」
「……どないしてみんながびっくりしとる中、公衆電話に出られるねん、なっちゃん」
怖いはずが、うっかり公衆電話に出てしまった夏樹に小梅たちがツッコミを入れた。