軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22「首なしライダーって交通違反じゃね?」②

手を振って職員室を出ていった夏樹を見送った権藤は、力無く椅子に座った。

夏樹の目は、今まで多くの生徒を見てきた権藤でも見たことのない目をしていた。

(異世界で殺伐とした日々を数年送ったと聞いていたが……我々が読むような漫画のような楽しい世界ではなく、過酷で苦しい世界だったというのがよくわかる。由良の目は、深い傷を負っている目だ)

持ち前の明るさのおかげで隠せているが、無理をしていると権藤にはわかった。

おそらく、月読も気づいているはずだ。

(中高生が、殺す、という言葉を平気で使ってしまうが……実際に言葉通りのことはできない。だが、由良はやるだろう。殺す相手だと認識したら、殺すだろう)

権藤の考えは間違っていない。

夏樹は殺すと決めたら殺す。

地球では、殺してはいけないし、罪に問われる。

何よりも、良心が殺させない。

だが、殺さなければ殺されていた環境で生きていた夏樹は違う。

敵は殺す。

殺せる力もある。

生きるために殺す。

容赦はしないだろう。

(教師とはいえ、どこまで踏み込むべきか。由良の周囲には良き理解者がいると聞くのでサポートしてくれれば良いのだが)

本来ならば、心が傷ついているならばケアが必要だ。

しかし、親にも事情を隠している夏樹がどの医者にかかれば良いのか権藤にはわからない。

できることは教師として見守り、力になることだけだった。

■。

「首なしライダーの件っすけど、真面目に目撃情報あるっすね。表向きにはいたずら扱いされているっすけど、昔からいるみたいっす」

「……うわぁ、マジかぁ」

一登と一緒に由良家に帰ってきた夏樹は、首なしライダーに関して調べ終わった銀子から話を聞いていた。

「都市伝説みたいな話だと思ったけど、昔からいるんだ」

「知らなかったなぁ」

「私も知らなかったっすよ。ホラー系はちょっと苦手なので、丸投げしたいっすけど、お父さんから解決できるならしてこいって言われちゃって」

「銀子さん……霊能力者なのにホラー系だめなの!?」

「き、斬れればいけるっす! 斬れない系は絶対駄目っす!」

「今日さ、ホラー映画の鑑賞会しよう」

「今、苦手って言ったっすよね!?」

ホラーと聞いて夏樹は思い出す。

かつて異世界で、入ったら死んでしまう館ががあった。

勇者だから解決しろと無茶振りをされたので、とりあえず火を放ってみたところ、結局街ごと燃えて大変なことになってしまった。

実は、街ぐるみで旅行者を殺して金品を奪うことを繰り返していたことが判明し、街の人間はすべて死刑となった――という出来事があった。

「ホラーかぁ。そういえば、夏樹くんって入ったら呪われる家に良く入っていたよね」

「あったなぁ、そんなこと」

「メンタル鋼っすか!?」

「俺も何度も付き合わされて、怖くて泣いたなぁ」

「いいじゃん、呪われなかったんだし」

「そう言う問題じゃないんだけど……」

一登が懐かしむように言うが、夏樹としては好奇心だった。

呪いがあるのなら見てみたい、とよく当時考えたものだ。

今なら対処できるし、呪いごと斬る自信もあるが、当時小学生だった夏樹ではせいぜいパンチくらいしかできない。

「首なしライダーってなんじゃ? デュラハン的な感じなんか?」

小梅的にはわからないらしい。

夏樹たちにしてみると、デュラハンは知っているがどんな存在であるのか少し怪しい。

「首がないのは一緒だけど、バイクに乗っているから違うと思うよ」

「それは誤解だぜ、夏樹」

台所で夕食の支度をしていたふりふりエプロン装備のサタンが、手を拭きながら会話に参加した。

「知り合いにデュラハンいるんだが、やっぱり単車は日本製っすよねぇ、って言っていたし、馬からバイクにバージョンアップされているはずだ」

「なんでやねーん!」

「結局、ようわからんのか。まあ、ええ。捕まえたらどんな存在か聞けばええ」

確かに、夏樹も気になる。

ちょっと調べてみると、バイク事故を起こした幽霊が首なしライダーになるとかあるが、向島市の場合はどうなのか。

(首なしライダーの神とか出てきたら、話を聞かずにぶっ殺そう)

夏樹はそう決めて、まずは腹ごしらえをすることにした。

――今夜の夕食は、炒飯と麻婆豆腐だった。