作品タイトル不明
21「首なしライダーって交通違反じゃね?」
「ごほん。いや、話を聞いて欲しかっただけだ。幸い、私にも妻にも特に問題はなかったんだ。少々怖くはあったし、せっかくの休日の最後にケチがついてしまったのは間違いないんだが」
「じゃあ、ぶっ殺さないと!」
「……由良。先生、心配だ。お前に強い力があるのは聞いているが、力を振るえば物事が解決するわけではないんだぞ」
「――え? でも、敵は殺せば誰も文句言ってこないし」
「…………」
権藤は沈黙した。
夏樹はなぜかドヤ顔をする。
「あー、その、なんだ。知らないのならいいんだ。すまなかったな」
「待ってください、先生! その依頼、この由良夏樹が引き受けましょう」
「……私がいつ依頼した?」
「先生の心と瞳が俺に助けてくれっと囁いています」
「それは幻聴だ。わかった、親御さんには私がうまく言うから明日はゆっくり休みなさい」
「嫌だなぁ。家でゆっくりできるわけがないじゃないですか! 休んだら休んだで、新たな神々とか神とか魔族とか妖怪とかUMAとかが押しかけて次のイベントが始まるだけですよ! あははははは!」
「…………」
笑い飛ばしてみるが、なぜか権藤はまた沈黙してしまった。
「ていうか、真面目な話をすると、月読先生に聞いた方が早くないですか?」
夏樹以上に強く、そして神である。
権藤の不安など、瞬く間に対処してくれるはずだ。
夏樹の純粋な疑問に、権藤は少し困ったように頬をかいた。
「そう言われてしまうとそれまでなんだが……月読先生は月読先生なんだ。私にとっては決して月読命ではなく、月読先生なのだよ」
「……権藤先生」
「そういう意味では、由良にも話をするべきではなかったな。すまない」
申し訳なさそうな顔をする権藤だが、夏樹としては話を聞いてしまった以上、無視はできない。
「一応、この辺の霊能関係って水無月家を通せばいいんですけど、あとこっそり警察にも霊能関係があるんですよ」
「それは知っているが、どう連絡をとっていいのかわからず」
「そうだったんですね」
水無月都に声を掛ければいいが、それは教師としては「なし」なのだろう。
そういうところは好ましく思う。
だが、権藤もだが、奥さんも怖いものを見てそれきりというのは不安だろう。
「大丈夫」という安心があった方がいい。
「ちょっと待ってくださいね。警察の人がウチにいるんで」
「いいのか?」
「いいでしょう。逆に、駄目な理由なんてないはずですよ」
銀子が絡めば自分も絡むことになるだろう。
向島の平穏が脅かされるのであれば、殴殺あるのみ。
銀子にメッセージを送るとすぐに返事が来た。
「場所を教えてくれれば今晩には確認しにいってくれるそうです」
「――そ、そうか。なんだかすまないな。由良を良いように使ってしまったようで」
「いえいえ。権藤先生にはバスケ部の件とかでご迷惑をかけましたし。このくらいならお安い御用ですって」
「まさかとは思うが、由良も由良で関わろうとは思っていないよな?」
「モチロンデスヨー」
「きっと言っても聞かんのかもしれないが、力を持っていようと由良は子供だ。私たち大人をもっと頼りなさい」
純粋にそう言ってくれる権藤のような人間がひとりでも異世界にいたら、きっと夏樹の異世界での日々は違っただろう。
やっぱり地球に帰ってこられてよかったと思った。