作品タイトル不明
18「ステータスオープンは浪漫じゃね?」
「……ねえ、一登くん」
「……なにかな、夏樹くん」
「レベルアップってなんだと思う?」
「………………俺が知るわけないでしょう!?」
「だよねー」
花子が作ってくれたお弁当を食べ終えてお茶を飲んでいた夏樹と一登だったが、急にレベルが上がってしまい困惑している真っ最中だ。
特に一登は、「なんで俺まで!?」と夏樹以上に混乱している。
「いろいろ規格外な夏樹くんなら、そりゃレベルが上がることもあるかもしれないけどさ! 俺は違うよね!?」
「異世界で火輪の剣に選ばれて勇者になった一登も十分すぎるほど規格外だと思うんだけど」
「……そうだった。それ以前の話として、夏樹くんと幼馴染みにして兄弟同然に育ったんだから規格外だった」
「俺の扱い悪くね?」
「妥当だよ!」
夏樹はしょんぼりする。
「こ、こうなったら、千手さんに学校に来てもらって突っ込んでもらうしか」
「混乱しているところ悪いけど、千手さんのツッコミが勇者レベルだとしても、さすがにレベルアップに干渉はできないとなっちゃん思うなぁ」
「もしかしたら、祐介くんもレベルアップしているかもしれないよ?」
とりあえず夏樹と一登は携帯を確認してみる。
だが、祐介からは連絡はない。
「どうして、僕だけ巻き込まれているんだろうね!?」
「いいじゃない、一登。巻き込まれ系主人公ってことで」
「巻き込まれ系主人公って、ちょっと違うよね!?」
そんなことを言い合っていると、ふたりはとあることに気づいた。
「もしかしたら」
「例のやつができるかもしれない」
気づいてしまった。
気づいてしまうと、胸が高鳴る。
夏樹も一登も思春期真っ只中の男の子だ。
ここまでファンタジーな現象が続けば、ちょっとくらい期待してしまう。
期待してもいいじゃないか、と思う。
ふたりは声を揃えた。
「――ステータスオープン!」
次の瞬間、眩い光が屋上を包み込み、夏樹と一登のステータスが――特に視認できたりはしなかった。
「ちくしょう!」
「がっかりだよ!」
夏樹と一登がその場に膝をついた。
特に一登はゲームが大好きなので、念願のリアルステータスオープンができなかったことで、夏樹よりも落ち込んでいる。
「……そうなると、レベルアップってなんだろう。真面目に考えたことはなかったんだけど、一登もってことは…………はっ、河童レベル!?」
「どんなレベル!? どうして俺と夏樹くんが揃ったら河童レベルなの!? 俺は特別河童さんが好きじゃないよ?」
「――え?」
「そんな信じられない、みたいな顔をされても。そりゃ、妖怪は好きだから河童さんだって人並みに好きだけど! 好きだけどさ! 河童の守護聖人を名乗る夏樹くんほどじゃないよ! ていうか、今さらだけど、河童の守護者ならわかるけど守護聖人って、聖人名乗るのはちょっと図々しくないかな?」
「ははっ、ナイスジョーク!」
「……ジョークじゃないし」
「でも、他に思い浮かばないよ。河童レベルが上がれば……」
「上がれば?」
「俺たちの頭部には立派なお皿が!」
「嫌だよ! それってハゲじゃん! 中学生なのに禿げたくないよ! せめて三十五歳まで頭部は元気でいてほしいよ!」
「ハゲじゃないし! 河童さんもフランシスコもハゲじゃないもん!」
「フランシスコさんのことなんて知らないよ! うわーん!」
「ふえーん!」
夏樹と一登は泣きながらぽかぽか殴り合った。
しばらくして、「……何をやっているのですか?」と魔力の変化を感じて様子を見に来た月読が声をかけるまで、子供っぽい喧嘩が続くのだった。