軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

19「新たなジャンルじゃね?」①

「……レベルアップ? 何を言っているんですか、あなたたちは」

月読命は夏樹と一登に呆れた顔をした。

「だってレベルアップしたんだもん!」

「空から声が降ってきたんです! 本当です!」

「……夏樹くんだけならいざしらず、一登くんまで……まさか本当にそんなことが起きたのですか?」

「だから、俺の扱いぃ!」

月読は、一登が説明すると、顎に手を当てて真面目に考えてくれた。

必死に訴えたのに、扱いが一登と違う夏樹が涙を流す。

「私は結構生きていますが、レベルアップという声が響いたという現象は聞いたことがありませんね。もしかして、ルシファー・小梅さんが空からいたずらしたのではないでしょうか?」

「さすがに小梅ちゃんの声は間違えないですから! なんていうか、無機質な、感情のこもっていない冷淡とした声なんですよ!」

「ふむ。夏樹くんには数日前から、一登くんは今日初めて聞いたのですね?」

「うっす」

「はい」

月読はしばらく悩む素振りをしたが、雲ひとつない空を眺めて笑顔を浮かべた。

「さあ、午後の授業は始まりますよ。優雅に屋上でお昼もいいですが、授業に遅刻しないでくださいね」

「ちょ、話を無かったことにしないでくださいよ!?」

「……さすがに、あなたたちの冗談でしょう? レベルアップってゲームじゃないんですから」

「ゲームみたいに異世界召喚された俺がここにいるじゃないですか! ていうか、月読先生だってゲームキャラみたいなもんでしょう! 神様なのに先生やっているとか! どうせ数年後に、生徒とゴールインしちゃうんでしょう!」

「……さすがにぶっ飛ばしますよ?」

「く、屈しないもん!」

「――ふむ。いいでしょう。では、この月読命。全力を持ってして――夏樹くんのお母さんにあなたのやんちゃぶりを」

「申し訳ございませんでした!」

夏樹は土下座した。

それはそれは見事な土下座だった。

「……異世界で無双した勇者も春子おばさんが怖いんだね。うん、お母さんが怖いのって世界共通だと思うけど」

「私も母は怖いですしね。さあ、冗談はこのくらいにして、授業の時間です。はい、ちゃっちゃとする!」

「うーっす」

「はーい」

手を叩いて夏樹と一登を急かす月読に、ふたりは元気よく返事をしてお弁当を片付けて教室に戻った。

「――あ、月読先生め! レベルアップの件、結局スルーされたし!」

ホームルームを終えた夏樹は、月読にスルーされたことを時間遅れで気づいた。

文句を言ってやろうと、職員室に向かうと、

「おおい、由良。ちょっといいか?」

「権藤先生?」

体育教師で、元バスケ部顧問であり、筋肉質の肉体をジャージで包んだ最新結婚したばかりの権藤に声をかけられた。

権藤は、厳しく、怖いが、生徒想いである。

厳しすぎる一面もあるが、思い返せば権藤のおかげで道を誤らずに済んだという生徒もいる。

また責任感も強く、バスケ部男子が裏でやりたい放題だったことに気づくことができなかったことを悔いてもいた。

「少し相談がしたいんだが」

「先生が、俺に? 別にいいですけど、俺が相談に乗れることといったら、異世界と河童さんくらいですよ?」

「……どちらも違うんだが、いや、違くもないのか?」

権藤は夏樹にそっと耳打ちをする。

「一応、月読先生から諸々は聞いている。その上で、相談したいことがあるんだ」

「――わかりました」

つまりファンタジー案件であると理解した。

指導や保護者と会談で使われる職員室の奥の部屋に通された夏樹は、権藤と向かい合い座る。

「すまないな」

「いえいえ。それで、どんなファンタジーな案件が?」

「ファンタジーと括っていいのかわからないのだが……首なしライダーっていると思うか?」

「――まさかの都市伝説系!?」

ジャンル的に、ファンタジーにしていいのか悩んだ。