作品タイトル不明
14「お好み焼きには無限の可能性があるんじゃね?」
「さあさあ、千手さんもお飲みになってくださいね」
「ありがとうございます」
由良家の茶の間で、ホットプレートを囲んで夏樹たちはお好み焼きパーティーをしていた。
「……は、春子さんにお酌してもらえるなんて……ぎりぃっ」
「ジェラるなクソ親父!」
お好み焼きが焼けるのを待っている間に、枝豆を食べていた小梅が千手に嫉妬するサタンに殻を投げる。
嫉妬してもしっかり手を動かしているのは、さすが魔王サタンだ。
「銀子さんもよかったね、代わりのビールが買えて」
「本当にそうっすよ。花粉症の神とかいう善神にはちょいちょいイベントを起こして欲しいっすね」
「俺はもういいよ。花粉症とってもらったのに、次回で返されたら泣くかも」
銀子はご満悦で、白い髭をつけていた。
そろそろ四月も終わるので暖かくなってきたので、冷たい飲み物が美味しいのだろう。
今はホットプレートを囲んでいるので熱気を感じている。
あと一ヶ月たてば、初夏を通り越して夏日和になるだろう。
(……GWはもちろん、夏休みもイベントばっかりだったらどうしよう。さすがのなっちゃんも身体壊れちゃうぅ)
新たな神々も夏は不用意に外に出ることなく冷房の効いた部屋でゆっくりしていてほしいと切に願う。
夏樹は基本的に健康体であるが、寒いのも暑いのも好きではない。
寒い日は部屋の中でぬくぬくしていたいし、暑い日には涼しい部屋でダラダラしていたい。
新たな神々もそうであってほしいと心から願った。
「はいよ、千手。サタンさん特製お好み焼きだ! 今ならサービスで、マヨネーズでハート書いて萌え萌えビームを無料オプションで」
「いらねぇ!」
「あ、ダーリン。じゃあ、私が」
「いらねぇからぁ!」
千手は相手が魔王だろうと、鬼だろうと構わず言い返している。
さすが、千手だ。
ツッコミの勇者である。
「ほら、どんどん焼いていくぞ! あ、春子しゃんもどうぞ」
「あら、いいのかしら?」
「春子しゃんは由良家の大黒柱ですから! 僕、一生懸命焼きました! ――愛情もたっぷりと込めて、ね!」
「あらあらサタンさんったら」
ちなみに、春子はお好み焼きが大好きだ。
間違っても広島風お好み焼きが出てこようものなら、大変なことになる。
夏樹は広島風お好み焼きは大好きだ。
春子も、自分に出されなければ問題ないし、作ってもくれる。
大人はいろいろ大変だ。
「なっちゃんの分は、かっわいー妹リヴァ子ちゃんが愛情キュンキュン込めてフライパンで作っているから待っていてねー!」
「はーい!」
「夏樹、明日は学校休んで胃腸科じゃな」
「んだと、小梅ぇ!」
「やるんか、リヴァ子ぉ!」
平成初期の不良のような眼光で睨み合うリヴァ子と小梅。
火花が散っているように見えるのは気のせいのはずだ。
「リヴァ子さん? 動画とってんじゃないの?」
「これ? 録画だからへーきだよーん!」
「常に動画を撮るとかプロだなぁ」
「なっちゃんもやる? 鏖殺系動画配信者なっちゃん!」
「なんで鏖殺系なの!?」
「え?」
「……どうしてそんな心の底からびっくりした顔をしているんだろう? 小梅ちゃんと銀子さんもぉ!」
鏖殺系ってどんな配信をするんだろうか。
もし、仮に夏樹が動画配信をするのであれば、可愛い犬さんや猫さん、ウサギさんと戯れたい。
「はーい、可愛い妹特製の、べ、別にお兄ちゃんのために愛情なんて込めてないんだからねっ、早く食べれば! ……美味しかったら、嬉しいけど……お好み焼きの完成だよぉ!」
「設定が難しいよ!?」
そんな妹が実際にいたら面倒臭い、と思いながらお皿を受け取る。
「……なにこれ、きのこ?」
お好み焼きには、なぜかその辺に生えてそうなキノコの絵がマヨネーズで描かれていた。
首を傾げる夏樹にリヴァ子は親指を立てた。
「やだなぁ。マヨネーズでリヴァイアサンを描いてみたんだよ! そっくりでしょう?」
「えっと、申し訳ないけど、俺はリヴァイアサンを見たことはないので、申し訳ないです」
「あ、そうだったね。じゃあ今度見せてあげるね!」
「わ、わーい!」
夏樹は、もしリヴァ子の本性が海獣ではなくきのこだったら嫌だなぁ、と思いながら広島風お好み焼きを口に頬張る。
――めちゃくちゃ美味しかった。
■
そして、翌朝。
――由良夏樹のレベルが0.9上がった。
「Ποιοι είναι οι λόγοι για τη μείωση των βαθμών; 《減点理由を教えてください》!」