作品タイトル不明
9「花粉症って辛くね?」②
小梅の強力な一撃を受けながら、花粉症の神は死ぬことはなかった。
だが、致命傷は避けられない。
左半身を失い、地面に倒れていた。
神であるため、再生能力を持つが再生速度は遅い。
「……へっくしゅん! 涙のせいで上手く当てられんかった。へぶしっ。まあ、ええ。動けんのならただの的じゃ。こっちも限界じゃが……くしゅっ、しゅっ、しゅべるばっ!」
「どんなくしゃみっすか」
銀子がテイッシュを渡すと、小梅はビームを出す勢いで思い切り「ズビーっ」と鼻をかんだ。
「とりあえず、やっちまおうぜ!」
指を鳴らして虎童子が花粉症の神に近づく。
「ふふ」
「何笑ってんだ?」
「滑稽ね。私が花粉症の症状を与えるだけの神とでも?」
「他に何があるってんだよ?」
怪訝な顔をした虎童子だったが、会話をするだけ無駄と判断した。
「よくわからんから、死んどけ」
殺意の高い拳が花粉症の神を襲う。
――だが、花粉症の神は虎童子の拳を右手で受け止めた。
「へぇ」
「私は花粉症を司る神よ」
「だからなんだってんだ!」
もう片方の拳を繰り出すと、花粉症の神の左腕が再生し虎童子の拳を受け止める。
「鬼風情が……所詮は妖怪。神とは違うのよ!」
「この、やろう!」
虎童子の腹を花粉症の神が蹴る。
どこにそんな力があったのか、虎童子の身体が飛んだ。
「…………鬼は面倒ね。丁寧に鳩尾を蹴ってあげたのに、両腕を持っていくなんて」
花粉症の神は虎童子を蹴り飛ばしたが、代わりに両腕を失っていた。
受け止めていた拳を話した刹那、逆に虎童子に腕を掴まれて引きちぎられたのだ。
「問題ないわ。すぐに再生するわ」
言葉通り、花粉症の神の身体が再生していく。
身体が元通りになったことを確認して、女神は立ち上がった。
「力を大きく消耗させてくれて、ありがとう。死ぬほど迷惑よ」
そう言って、花粉症の神は小梅を見た。
「あなたは散々やってくれたわね。お礼に、花粉症から解放してあげる」
「なん、じゃと?」
鼻をかんでいた小梅が怪訝そうな声を出す。
花粉症の神が返事をせずに指を鳴らす。
次の瞬間、小梅の涙と鼻水が止まった。
「あなたは二度と花粉症を体験できない。――哀れね」
「……こやつ、善良な神の予感がするんじゃが?」
「おビール様をぶっ殺した悪神っすよ! 騙されたダメっす!」
「……花粉症から解放してくれたんじゃがら、俺様的には十分ボコしたし、許してやってもええんじゃが」
花粉症から本当に解放されている小梅は、今にも花粉症の神に拝み出しそうだった。
しかし、元から花粉症とは無縁な銀子は、酒を駄目にされただけだ。恨みしかない。
「一応、聞いておくっすけど、何をしたっすか?」
「そのままよ。私は花粉症の神。花粉症を与えることはできないけど、花粉症を奪い私の力にすることができるの」
「……中途半端っすね」
与えることはできないのか、と銀子はほっとした。
虎童子もそうだが、せっかく無縁の花粉症になりたいとは思わない。
そういう意味では、奪うだけしかできないことに安堵する。
「私たち花粉症の神は、それぞれ力を持つわ。私は花粉症の症状を大きく発症させ、花粉症を奪い自分の力にすることができる」
「それだけっすか?」
「花粉症の神が花粉症を力にするということがどういうことか、その身でわからせてあげるわ!」
花粉症の神は今まで以上の神力を溢れさせた。