作品タイトル不明
8「花粉症って辛くね?」①
「なん、ですって」
花粉症の神が絶句しているが、銀子は構わず攻撃をする。
踵を、とん、と蹴ると仕込んであるナイフが爪先から飛び出した。
しなやかな足から繰り出される蹴りと同時に、ナイフが襲う。
「――このっ、刃物狂め!」
「お褒めいただけて光栄っす!」
「褒めてないわよ! 刃物狂いで酒狂いとか怖いから!」
銀子の蹴りを手で受け止める。
ナイフが手のひらを貫通するが、大した傷ではない。
「身体中に刃を仕込んでいるのね……まいったわ、花粉症の症状がない人間がいるなんて。――っ、まさかアルコール消毒ってこと!?」
「……私が言うのも変っすけど、んなことたぁないっす!」
青山銀子は新たなナイフを構えて思考する。
花粉症の神がどのような力を持つ神かわからなかったが、花粉症の症状を与える神であると判断した。
だが、前提として花粉症を持っていないければその力は発揮しない。
――ならばここで殺してしまった方が勝ちっすね。
神殺しをすることは嫌厭してきたが、仕方がない。
神を殺せば大なり小なりリスクがある。
呪いであったり、祝福だったり、神によって様々だ。
しかし、すでに異世界で新たな神々を殺しているが、何もない。
新たな神々には、古から存在する神々とは少し違うのだと判断した。
放っておける神ではなく、仮にリスクがあっても殺すべき神だ。
(魔剣太郎と花子を持ってきていなかったのが痛いっすねぇ。ま、いくつか術はあるっすけど)
神は不死ではない。
向島市を長く見守った土地神みずちも死んだ。
ならば、新たな神々の花粉症の神も殺せる。
「ま、気楽にやるっす。自分だけじゃないっすからね」
ナイフを構えて肉薄する。
神の再生能力が鬱陶しいが、問題はない。
花粉症の神が銀子に集中していることが大事だ。
「正々堂々戦うっすよ!」
「いいでしょう! かかってきな」
花粉症の神が銀子をまっすぐに見て集中した次の瞬間、背後から虎童子の踵落としが頭部に決まった。
「がふっ!?」
「残念だったな! 花粉症の神! あたいも花粉症じゃねえぜ! ちなみに、ダーリンも花粉症じゃねえから!」
離れた場所から「なんで知ってるんだよ!」というツッコミが聞こえた。
虎童子の踵に頭蓋を砕かれた花粉症の神が、殺気立ち振り返る。
刹那、銀子が無防備になった女神の首を深く斬った。
「くっ、この」
反射的に喉を抑えてしまった女神の胸を背後から虎童子が貫く。
心臓からは外れてしまったが、神に負けず長い時間を生きる鬼の一撃は十分すぎるダメージを花粉症の神に与えた。
「――締めはお任せするっす!」
「任せんかい! このクソ花粉症の神がぁあああああああ! この小梅様の美貌を涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしよって! 責任とって死にさらせぇええええええええええええ!」
いつの間にか立ち上がっていた小梅が、魔力と神力を融合させた強い力を鋭く赤い閃光にして解き放つ。
「――しま」
動けないと判断していたのだろう。
戦力から外した小梅が再び立ち上がり攻撃をしかけたことに花粉症の神が驚いた顔をした。
銀子と虎童子が大きく跳躍し、離れる。
――赤い閃光が花粉症の神を飲み込んだ。