作品タイトル不明
4「地元のスーパーって意外と安くね?」②
「ウチの主人がいつもお世話になっていまーす」
「……どうしちゃったの、タイガーさん。一昨日もテンション振り切れていたけど、壊れちゃった? もしくは千手さんと……はっ、そういうことか!」
「何か察したところを申し訳ねえが、まったく違うからな!」
千手とは、祝福の神に利用された淫魔の時以来だ。
といっても、二日ぶりなのでさほど時間は経っていない。
「俺の親父がいただろう。あのくそ親父がマジで虎童子のことを嫁だなんだとか言い出したせいで――調子に乗っているだけだから気にすんな、マジで」
「うんうん。でもきっとなんやかんやあって嫁になっちゃうんでしょう?」
「俺は安倍東雲とは違う!」
「きりっとしているところ申し訳ないけど、そんな未来しか見えないよぉ」
「俺は頑張っているんだ!」
冷たく突っぱねることなく、なんやかんやと一緒に生活しているのは千手が優しいからだ。
身内には甘いというのかもしれないが、つまり虎童子は身内扱いであるため邪険にできない。
時間の問題でしかないと思う。
「千手も苦労しとるのう」
「小梅の姉御」
「俺様もクソ親父には苦労させられとるんじゃ。魔界の王がふりふりのエプロン装備して主婦しとるとか……百歩譲って我慢できるんじゃが、夏樹のママに懸想してモジモジしとる姿を見せられる娘の身にもなれというんじゃ!」
「――姉御も大変だな」
「千手ものう」
ふたりはがっちり握手を交わした。
「それで、淫魔に関してはあれからどうなったの?」
「ちょうど今晩にでも報告しようと思っていたんだが、まあいい。淫魔はすべて水無月家経由で院に送った。ま、よほど悪さしていなかったらペナルティくらいだが、やりすぎていることがわかれば、処分コースだな」
「院こわいなー。でも、調べたりするんだね。問答無用でぶっ殺すのかと思った」
「人に害を与えている時点で処分案件なんだが……淫魔はそもそも人間から精気を奪う生き物だ。仕方がないという一面もある。小梅の姉御と青山の姉御から酒を取ったら……わかるだろう?」
「……死んじゃうね」
「ま、そういうことだ」
夏樹と千手はカートを押しながら声を小さくして会話を続けた。
背後では、小梅と銀子が虎童子とガールズトークを繰り広げているので、そっとしておく。
いくら夏樹が異世界で無双した勇者であっても、ガールズトークに関わる勇気はない。
「それにしても、淫魔といい新たな神々といい、よくもまあ向島市に現れるもんだ。まるで引き寄せている何かがいる……とは思わないが、思わないけど……気のせいだといいなぁ」
「どうして千手さんは俺の顔を見て、酸っぱい顔をしているんだろうね!」
「……きっと今日もイベントなんだろう?」
「ふっ、甘いな千手さん。昨日はイベントはなかったんだ! つまり今日もイベントはない!」
「……反動で倍イベントがあるかもしれないだろう?」
「……不吉なこと言わないでよぉ」
「なんかすまん」
――まさか夏樹たちも、スーパーの帰りにイベントが待っているとは思わなかった。