軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エピローグ「イベントがないのがイベントじゃね?」

「…………おかしい。今日はイベントがなかった! きっとこの反動で明日世界が滅ぶ! ゴッドが荒ぶるんだ!」

「なに言っとるんじゃ、おどれは?」

「なにを言ってるっすか、夏樹くんは?」

由良家の茶の間で、夏樹が震えていた。

小梅と日中、遊び倒して帰宅してから挙動不審だ。

そわそわしたと思えば、今は宇宙に祈りを捧げている。

「河童大神様、お助けください!」

「ええいっ、存在すらせん神に祈ってどうするんじゃ!」

「いるもん! 河童大神様はいるもん!」

「おったら新たな神々よりもやばいじゃろうて! 河童を司る神とか誰得なんじゃ!?」

「全宇宙の生命体をお守りしてくれるんだよ!」

「範囲広すぎじゃろ!」

カタカタと震える夏樹に小梅が頭突きをした。

「へぶしっ」

「……とりあえず落ち着かんかい」

「うっす」

麦茶を一気飲みして、額をさすりながら夏樹は深呼吸を繰り返す。

「安心せい。きっと夏樹が知らんところでどえらいビッグイベントが起きておって、間違いなく後日巻き込まれるんは決まっておるじゃ。一日くらい、のんびりするのもええじゃろう」

「……つまり、のんびりイベントてこと?」

「…………そうじゃ! 今日は日常回というイベントなんじゃ!」

「なるほど。そうか、そうだよね! イベントがあったんだよね!」

「お、おう! 俺様たちは常に人生というイベントの中におるんじゃ!」

夏樹は口元を手で覆い、感動した。

「さすが小梅ちゃん。美少女美脚大天使……深い」

「そうじゃろぉ?」

「いやいや、何にも深いこと言えてねーっすから! なんでそんな感銘を受けたみたいになっちゃったっすかね。チョロすぎて夏樹くんの将来が心配っすよ!」

「……大丈夫じゃ。今も十分すぎるほど心配じゃ」

「そりゃそうっすけど」

小梅と銀子からすると、毎日イベントばかりなのだから一日くらいゆっくりしたって罰が当たらないだろうと思えた。

特に、銀子から見れば、魔王サタンとその娘の小梅、さらに海獣リヴァイアサン、宇宙人のジャックとナンシーと同居している時点で毎日が大イベントだ。

できれば台所に目を向けて欲しい。

魔王サタンがフリフリのエプロンを身につけて、夏樹の母春子と一緒にコロッケを揚げているのだ。この光景がイベントだ。

「ほらほら、夏樹。イベントとかよくわからない話は終わりにして、テーブルを開けてちょうだい」

「はーい」

「今日はサタンさん特製のコロッケよ! 本当にサタンさんったらお料理が上手で、びっくりだわ。ダンスはあんなに情熱的なのに、料理はとても繊細なのよ」

「そ、そんな春子しゃん。僕、照れちゃいましゅ」

コロッケの乗った大皿を運びながらもじもじするハリウッド俳優顔負けのイケおじサタンの姿は、ある意味イベントだ。

「というか、今日三郎と会ったんだろう。ほら、イベントじゃないか」

「――っ、さすがサタンさん、深い」

「いや深くねえよ。ていうか、ルシファー一家はなんで向島市に集まっているんだろうな。さすがに俺も不思議だわ」

熱々のコロッケが丸テーブルに並んだ。

湯気を立つ黄金色のコロッケは視覚だけで美味しそうだ。

新鮮な千切りキャベツが山盛りで大皿に。

母お手製のじゃがいもの冷製スープも配られた。

「最近、みんなでご飯が食べられなかったけど、今日は勢揃いね」

春子が嬉しそうだ。

食卓には、二階からリヴァ子、ジャックとナンシーも揃っている。

「この間まで、夏樹とふたりきりでご飯だったから賑やかで嬉しいわ」

「……お母さん」

「少ししんみりしちゃったわね。さあ、いただきましょう!」

春子が手を合わせると、みんなが手を合わせて「いただきます!」と声を揃えた。

「そっか。今日は家族イベントだったんだね」

「ええから早よ食え」

ようやく今日のイベントを理解した夏樹の頭を叩いた。

コロッケはめちゃくちゃ美味しかった。

母の冷製じゃがいもスープは、異世界から帰ってきてから初めて食べた。

――涙が出るほど美味しかった。