作品タイトル不明
間話「まもんまもんな黒歴史じゃね?」
――青森某所。
農家兼動画配信者さまたんは悩んでいた。
「せっかく周平の周平に取り憑いている生き霊を謎の市役所職員どぅーまんさんがなんとかしてくれたのに、新たな問題が起きるなんて」
先日、周平の周平に生き霊として取り憑いていた少女の正体と、周平に想いを寄せる美希の思いが判明し、ラブトライアングルに発展するかとかつてない危機が訪れた。
しかし、謎の市役所職員どぅーまんによって、生き霊は祓われ、周平は自分がラブコメ主人公であることを自覚し、美希は正々堂々周平を振り向かせるように頑張ると前向きになった。生き霊だった少女佳子も、美希と親戚ではあったが、恋のライバルとして戦うと意気込んでいる。
問題は、周平に気になっている子がいるらしいが、そこは当人同士の問題なのでさまたんは見守ることにした。
悩みの相談はいつでも乗るし、助言もしよう。
今しかない時間を精一杯生きて欲しいと願うだけだ。
ひとつの問題が解決すると、次の問題が生えてくるのがさまたんと愉快なまもんたちだ。
「なんでマモンは作家デビューを企んでるんだよぉおおおおおおおおお!」
以前にも小説を書いていたが、すべてがまもんまもんという恐怖の小説となってしまったので頓挫したと思っていたが、マモンは諦めていなかった。
「西洋の魔族のくせに日本で作家デビュー企みやがって! しかもなんだこのタイトル! ――まもんまもんと転生したら追放される聖女でまもんまもん。せっかく転生したのでまもんまもんしてまもんまもんしようと思います! とか、途中でタイトル考えるの諦めただろ! ていうか、なんで聖女になってんだよ! お前、仮にも七つの大罪の魔族だろ! 魔族の中の魔族じゃん! なんて聖女!? そういう願望があるのか!?」
ツッコミは多い。
多いが、それはいい。
マモンに異世界転生願望があっても、聖女になりたい願望があっても瑣末な問題だ。
さまたんが無視できないのはそこではない。
「――こいつ、私が数年前に書いた小説とネタが被りすぎてるんだけど!?」
「…………気づいてしまもんまもん」
「うおぉ!? マモン、てめえいつから!?」
「さまたん様がオウっ、ノー! と懊悩しているときからでもまもんまもん」
「私はそんなことしてねえから。ていうか、気づいてしまったって、お前どういうことだ……まさか!?」
さまたんの身体が震える。
それはありえない、と脳が否定するが、心が叫んでいる。
マモンがにやり、と笑った。
「実は、このまもんまもんな作品は、さまたん様が数年前にノート一冊分のまもんまもんな設定を盛りだくさんにした上で、書き上げたものの、投稿サイトにアップする勇気がなくて封印された小説でまもんまもん」
「ご丁寧な説明ありがとう! ていうか、なんでそれを!?」
「納屋で厳重にまもんまもんな封印されている箱を見つけたので、気合いで破壊しまもんまもん!」
「太一郎くんでも破壊できない封印のはずなのに!?」
「このマモンは強欲な魔族ですが、いざというときには実力以上の力を出す魔族でもありまもんまもん」
「いざという時が私の黒歴史を暴く時でいいのか!? 本当にそれでいいのか!?」
「さまたん様、そろそろ過去の自分と向き合う時が来たでまもんまもん」
「待て、いろいろおかしい! やんちゃした過去と向き合えというのならわかるが、黒歴史の小説と向き合う必要があるのか!? お前、何を企んでいる!」
「……企むなど、そんなまもんまもん。このマモン、強欲な魔族ですが、姑息な真似はしない魔族でまもんまもん。決して、このマモンへの執筆依頼をさまたん様に却下された報復をしたいわけではございまもんまもん」
「言ってる! 報復って言ってる! お前、まだ自叙伝を出すこと諦めてねえのか! 私の小説よりも黒歴史だぞ! ていうか、お前の自叙伝に私出てくるだろ! だから、だーめー!」
「そこをなんとかまもんまもんと!」
「だーめー!」
さまたんは決して首を縦に振らなかった。
マモンが自叙伝を出そうものなら、「まもんまもん」の生みの親と認識されてしまうからだ。
この日、珍しくさまたんはマモンに屈しなかった。
――だが、すでにとある投稿サイトにさまたんの小説がアップされていることを、まだ知らない。