作品タイトル不明
67「花子さん強くね?」①
「あら、久しぶりじゃない、愛の女神。ていうか、なんで大暴れしてるのよ? そっちの厨二病みたいなスーツ着ている子は友達? あ、厨二病の神ってやつ?」
ルシファー・花子は悪意など全くなく感想を口にする。
「おまっ」
挑発するなよ、と愛ちゃんが言うよりも早く、神力の塊が殺意を持って幸せの神から放たれ花子を襲う。
「――ふうっ」
しかし、花子は慌てることも、瞬きさえせず、神力を込めた息だけで相殺した。
「……相変わらず出鱈目だな。さすがルシファーっていうか、さすが花子っていうか」
「ふふん! もっと褒めなさい! ていうか、なんで喧嘩してるの? あ、わかった! 結婚相談所で」
「結婚相談所から離れろよ! なんで私と幸せの神が結婚相談所に登録している前提で話を進めるんだよぉ!」
「……みんな登録していると思っていたわ」
「んなわけないだろ!」
ショックを受けた花子の背後に幸せの神が移動した。
まさに神速。
殺意の込められた、先ほどよりもさらに力がある神の一撃が花子を襲う。
――が、幸せの神の動きよりも早く花子が回し蹴りをした。
勢いよく海に蹴り落とされた幸せの神は、大きな水飛沫を作った。
「遅いわ。ていうか、森山田さんと一緒に通ったエステで綺麗になった肌に傷をつけようなんて万死に値するわ」
「森山田さんって誰!?」
「婚活の先輩よ!」
「……絶対、良い影響を与えてくれる先輩じゃないよなぁ」
花子が砂浜に降り立つ。
ずぶ濡れの幸せの神がひしゃげた左腕を押さえ、肩で息をして海から戻ってくる。
「よくも、よくも!」
「幸せの神だったわね。あんたのこと知っているわ。私と森山田さんを幸せにしてくれない、役立たずの神でしょう?」
「煽るなぁ」
「僕を、役立たずだと言うのか!」
「だって、あんたって誰も幸せにしてないじゃん。幸福の神を食って力を得たことは知ってるわよ。それで? 誰を幸せにしたの?」
「僕に選ばれた人間はまだ誰もいない! 僕の手で幸せに」
幸せに神の言葉の途中で、花子が彼女の顔を掴んだ。
「幸せの神を名乗るなら、選り好みしてんじゃねえよ! 無条件にみんなを幸せにしたいって言えよ!」
そのまま砂浜に渾身の力で叩きつける。
一度、二度、三度、四度、五度。
幸せの神の頭部が血で真っ赤になった。
「あー、嫌だ嫌だ。私って、常に全力なの。だから、あんたみたいに言い訳して選り好みしたり、今も手を抜いて戦っている奴って嫌いなのよね」
「――僕の力は、人を幸せにする力だ」
「だーかーらー、誰かを幸せにしてから言いなさいよ」
倒れたままの幸せの神の胸を全力で踏みつける。
肋骨が砕け、内臓が潰れた感触が足から伝わってくる。
幸せの神の口から血が吹き出し、花子の頬を赤く染めた。
「相変わらずパワー系だね」
「ルシファーですから! ていうか、私が一番強いからね!」
「そういやそうだったね」
「小梅はいろいろ折り合いがつけば私よりも強くなるんでしょうけど。ま、あの子だって現状でも十分強いでしょう? 三郎は戦いに興味はないし、一心は努力で私ほどじゃないけど強くなった子だし。ルシファーが畏怖されているのは、父親が魔王サタンだからじゃないのよ。私たちが個々で強いからよ」
花子が指を鳴らす。
一本の光の槍が現れる。
「私は別に新たな神々とかが何をしようとどうでもいいんだけど、今は向島市の土地神なのよね。だから、この地で好き勝手やる奴は殺すわ」
「やれるものならやってみろ! たかが天使がこの幸せを司る神を殺せるものか!」
「上等。んじゃ、死ね」
「ちょ、ま、おま……ここでそんな力を」
愛ちゃんが止める間もなく花子は容赦無く、慈悲もなく、槍を掴み振り下ろした。