作品タイトル不明
間話「しののんが悩むんじゃね?」
向島市のホテルに泊まる、安倍東雲は悩んでいた。
現在、異世界から無事に帰還して可愛い弟と鬼姉妹と一緒にホテルに泊まっていた。
「……あかん、どうしたらええんやろう」
糸目を思い切り開きながら、大浴場で悩む。
「こういう時に誰に相談したらええんやろうなぁ。自分、友達おらへんから相談できる子がおらへんわ」
悲しいことを言い出した東雲に、近くにいたおじさんが泣いた。
「はぁぁぁぁぁぁ」
大きくため息をつく東雲の悩みは、異世界で再会した茨木童子にあった。
彼女は、星熊童子、熊童子と円と一緒にバイキングを楽しんでいるだろう。
以前の茨木童子にはあった狂気は今はなく、妹たちとの関係も良い。
円はかつて茨木童子に襲われ、幼馴染みにして淡い思いを抱いていた由良夏樹を目の前で殺された過去があるため、複雑ではあるが、それは茨木童子も同じだった。
結果的に、なぜか夏樹は生存しており、再会を果たしている。その夏樹によって茨木童子は一度殺された。
それにより円の長い復讐は終わったのだ。
円も一度はそう割り切ったので、今更蒸し返すつもりはないようだ。
茨木童子も、絶望の神に命を繋がれただけであり、本人が生き返ろうと思ったわけではない。
彼女自身も、狂気に囚われていた時の自分を反省しているようだ。
ただ、やはり鬼というべきか、人を襲ったことではなく、愛する人の家族を悲しませたことを反省しているようだ。
――東雲が悩んでいるのは、茨木童子とのこれからだった。
何も今更、彼女へ抱いていた愛情を隠すつもりはない。
彼女と共に生きていく。
自分が死ねば、彼女も後を追うだろう。
「け、結婚とかきちんとした方がええんやろうか?」
幸い貯金はある。
不労所得もある。
裏家業をせずとも京都で暮らしていくには問題ない。
ただ、京都では茨木童子は暮らし辛いかもしれない。
ならば、ここ向島市だ。
院に影響力を持つ水無月家と懇意にすれば、京都と院の関係も良好になるだろう。
仕事も回してもらえる。
なんなら、向島市にマンションを建てて不労所得を得てもいい。
問題は、茨木童子ときちんと夫婦という形をとるべきかどうか、だ。
「なあ、兄ちゃん」
「あ、すんません、独り言を垂れ流してもうて」
「いやいや、それはいいんだけどさ」
隣にいたおじさんが声をかけてきた。
うるさかったかと思いすぐに謝罪する東雲に、おじさんは違う違うとと笑う。
「話を聞いちゃって申し訳ないんだけど、おじさん的には――ちゃんとケジメつけた方がいいよ」
「――っ」
「よかったら、相談乗るよ。――サウナ行くかい?」
「よろしゅうお願いします」