作品タイトル不明
63「銀子さんの報告じゃね?」②
「異世界で、中年から始まる無双生活したかった……が、報告書を見る限りクソみたいな世界だな」
「そうっすね。まあ、私も全部を見たわけじゃないかったっすけど、それでもクソでしたよ」
「夢も希望もねえ異世界だ」
「まったくっす」
親子で、大きく嘆息する。
「んで、新たな神々に関してだが、警察としてはその辺は全く知らねえ。霊能力者でもどれだけ知っているんだかって感じだな」
「私も知らなかったっす。以前、自称神を斬り捨てことはあるっすけど、もしかしたら新たな神々だったのかもしれないっすねぇ」
「個人的には、そんな神よりも、ポセイドンが釣具屋やっていることに驚きだぞ。ポセイさんって俺、連絡先知ってるんだけど。先月も、新しい釣竿を買う相談したばかりなんだけど!」
「よかったっすね。超ビッグとお知り合いじゃないっすか!」
「どんな顔して次会えばいいのかわからねえ! ていうか、ローンで釣竿買った俺のことどう思っているんだろうか!?」
「別にローンでもいいんじゃないっすか? ていうか、ローン組むほど高い釣竿を買ったことがお母さんにバレないといいっすねぇ」
「――しまった」
にちゃぁ、と笑う銀子を見て、久志は己の失言を悟った。
そっと財布から一万円札を取り出すと、机の上に置いた。
「これで帰りに良いものでも食べなさい」
「わーい!」
「こ、今月のお小遣いが……終わっちゃった!」
「見え張って高い釣竿買うからっすよ。腕があれば安物で十分でしょうし」
「見栄じゃねーし! 俺の腕に見合ったものを買ったんだよ!」
「はいはい。そういうことにしてあげるっすよ! んじゃ、私はこれで」
「まだ話は終わってねえよ!」
一万円札を取った銀子を再び久志が呼び止める。
「なんすか? 報告書がすべてっすから、それで勘弁してほしいっす」
早く帰りたいと顔に出ている銀子に、真面目な顔をして久志が言う。
「報告書にある義政先生という方を、スカウトできないか? 将来大物になるぞ」
「義政くんはまだ五歳っすからね!?」
「これマジで五歳なの!? 十五歳とかじゃなくて? 脱字じゃなくて?」
「そうっす!」
「それはそれで問題だよ! すげえな最近の五歳児って! あと、マジで五歳児ならあっちこっちに連れ回すんじゃねえよ!」
「……それはごもっともっす」
義政少年に関しては、言動がちょっと大人なのでつい子供扱いするのを忘れてしまう。
良識ある大人として、普通の五歳児に対しての扱いを反省した。
「――一番の問題がある」
「まだ何かあるっすか?」
「魔王サタンについてだ」
「――っ」
久志の表情がかつてなく険しい。
無理もない。
魔界を統べる王が由良家にいるのだ。
「魔王サタンが由良家に来たことは知っている。だが――その後、居座って主夫してるってどういうことだ!?」
「さ、サタンさんのご飯は美味しいっす!」
「そういうことを言ってるんじゃねえよ! なんで春子さんと一つ屋根のしたで生活してんだよ! ――追い出せ!」
「無理っす!」
「じゃあ、俺が出るしかねえ。男にはたとえ負けると分かっていても戦わなきゃいけない時があるんだよ!」
「面倒くせえ親父だなぁ! 人の家のことに口出すと春子さんから嫌われるっすよ!?」
「――しょぼーん」
「うぜぇええええええええええええええええ!」