軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

61「次男なのに三郎じゃね?」②

夏樹は、ソーセージとチーズの塩っけがあるクレープを選択した。

ぱりっとしたソーセージに、とろけたチーズと甘いクレープ生地がとても合って美味しかった。

「――うま」

小梅は鼻にクリームをつけて、美味しそうだ。

奢りだから、とチョコタイプのクレープも追加で頼んで片手に持っている。

「あー、甘味が染み渡るんじゃー」

「わかります。疲れた身体には、糖分ですねー」

カスタードチョコクリームがたっぷり入ったクレープを上品に食べる三郎は幸せそうだ。

兄と妹で、甘味を堪能している顔がそっくりだ。

(女の子たちが隠れて三郎さんの写真撮ってるし、小梅ちゃん見てモデルみたーいって言っている中、うわ、由良だって声がたまに聞こえてきて……この扱いの違いになっちゃんおこ案件ですわ)

向島市を代表する紳士である夏樹を見て、怯えるような反応は正直遺憾でしかない。

だが、紳士である以上、気づかないふりをしておくのが一番だと考えて我慢する。

「んで、いつの間に三郎兄は向島市に来とるんじゃ?」

「それはこっちのセリフですけどねぇ。もともとは東京の病院にいたんですけどね。派閥争いに嫌気が差しまして」

「ドラマみたいなことがあったんか!?」

「ドラマ以上ですよ。なぜかわかりませんが、僕を派閥に取り込もうと躍起になってしまい、争いが過激に。うんざりしていたところに、夏樹くんのお母様、春子さんがこの街の病院を紹介してくれましてね」

「まーた、お母さんだー!」

サタンといい三郎といい、春子はルシファーと縁がある。

夏樹も人のことはいえない。

すでにコンプリート済みなのだから。

「春子さんにはお世話になっています。先日も、飲み会に誘ってくださって」

「お母さんの飲み会に三郎さんいたんかーい!」

「いますとも。不思議なことに、プライベートはぼっちなんですよ。女性から声をかけられることは多いのですが、揉め事に発展するパターンが多いのでお断りしているんです。するとなぜか同性たちが舌打ちをするんです」

「……うーん、これは天然さん?」

「どうじゃろうか? 興味がないだけかもしれんのじゃ」

目元を隠しても隠せないイケメンの三郎だ。

さぞ人気であり、嫉妬もあるだろう。

「春子さんや他の方々は、その、気さくな方々なので遠慮がなくていいんですよ」

(サタンさんが知ったら嫉妬の涙を流しそうな気がするけど、なっちゃん知らないー!)

「さて、夏樹くん」

「はい?」

クレープを食べ終えた三郎はハンカチで手を拭くと、優しい顔で頭を下げた。

「小梅は、元気がありあまっている子でやんちゃもしますが、根っこはいい子です。ぜひ仲良くしてあげてください」

「もちろんです。小梅ちゃんは家族ですから」

「――っ、そこまで想ってくれているんですね。安心しました。夏樹くん、これから僕のことを兄と呼んでください」

「あ、はい。三郎お兄さん?」

兄と呼ばれた三郎が、ハンカチで目元を拭った。

「今日はいい日になりました。家で、とっておきのワインを開けましょう。夏樹くん、いずれ一緒に酒を飲みたいですね」

「うっす!」

「それでは、デートの邪魔をしても申し訳ないので、僕はそろそろお暇します。小梅」

「なんじゃい」

「……相手は未成年ですから、いろいろバレないように」

「ちょ、おどれは死ぬほど誤解しとるじゃろう!?」

「ははは、わかっています。いいんですよ」

「やめえ! その理解ある顔を! そうじゃなくて、三郎兄は絶対に勘違いしとるからぁ!」

叫ぶ小梅の頭を撫でて三郎はイートインを出て行った。

途中、女の子から「れ、連絡先交換してください!」と声をかけられながら、やんわり断る背中を見送る。

「……さ、三郎兄め……家族ってそういう意味じゃないんじゃが。いや、まあ、俺様はウェルカムじゃが、条例さえなければ……おのれ」

夏樹も鈍感ではない。

小梅が自分を憎からず想ってくれていることはわかっている。

だから、珍しく顔を真っ赤にして、

「――きゅん」

ときめくのだった。

――このあと場所を変えてめっちゃボウリングした。