作品タイトル不明
47「しょうもないイベントじゃね?」①
「るんたった、るん、るん、るるるんるん!」
鼻歌を歌いながら廊下をスキップする夏樹。
生徒たちが「うわ、やべぇ。きっとこれから恐ろしいことするんだぜ」とか言われているが、聞こえない。
森と片岡のアドバイスを受け、夏樹はさっそく小梅と銀子と一緒に放課後の街に繰り出そうと考えていた。
義政と一登も誘おう。
疲労が取れているのなら、円も呼びたい。
「あ、いたいた。夏樹くーん」
「おう、一登じゃん! 学校来ていたんだ」
下駄箱で待っていたのは三原一登だ。
数日ぶりに学生服を着ている。
一登は、あまり学校が好きじゃない。
問題児の兄がいるらしく、迷惑をかけられているのだ。
しかし、夏樹は知っている。
一登自身のことを、問題児の弟として色眼鏡で見る生徒はいるが、それ以上に好かれていることを。
今も女子生徒が「――っ、一登様。御尊顔を拝謁する栄誉に浴しましたる事、身に余る光栄……」と感極まっているが、一登は気付いていなかった。
彼のさりげない優しさにときめき、救われた生徒はいるのだ。
ちなみに夏樹を見た女子生徒は「うわ、由良夏樹だし。目が呪われる」「相変わらず怖すぎ、あ、出ちゃった」「目を合わせちゃダメよ、殺されるわ」と酷い言いようだった。
夏樹はちょっとだけ心の中で泣いた。
「午前中に親と話をしてね。月読先生もフォローしてくれるって言ってくれたからさ」
「うん」
「権藤先生と、萌乃萌葱先生……にはびっくりしたけど、気にかけてもらえて嬉しいよ。久しぶりに来た学校で伝説の木が埋まっているのもびっくりだったけどね!」
「あれはなぁ、見て見ぬ振りしよう。他の奴らはそうしているから」
「ある意味、急に大木が生えているのがファンタジーなんだけど、スルーできる生徒や近隣の方々も大概だよね」
「本当ねー」
スニーカーを履いて校舎を出た。
「意外とっていったら失礼かもしれないけれど、クラスメイトのみんなもいい人ばかりだった。わかってはいたんだけど、なんだかちゃんと見れていなかったっていうか」
「そっか」
「うん」
一登は問題のある家族のせいで、自分も悪く思われていると信じていた。
もちろん、比べる生徒もいた。教師も、いた。
だが、そんな奴らばかりじゃない。
一登は一登だときちんと見てくれる人はたくさんいたのだ。
そのことに気づけたことは、一登にとって良いことだ。
一登はもう、問題のある家族から解放されたのだから。
「俺は俺だね」
「当たり前だ。一登は一登さ」
夏樹と一登が拳と拳をぶつけた。
「それに、夏樹くんが学校に通い始めたのに俺だけのんびりしているとか、悪いことしている感が凄すぎて。近所のおばちゃんたちも、夏樹くんが学校行ったから代わりにサボってるの? ふたり仲良く学校に行ってもいいのよ、みたいなこと言われたし」
「俺の扱い!」
はははは、と明るく笑う一登と、空笑いしか出てこない夏樹だった。
「あ、そうだ。森さんと片岡くんにも言われたんだけど、イベントさんから解放されたんだから放課後をぱーっと遊ぶって言うのはどうかな?」
「いいね! 大賛成だよ!」
一登と一緒に校門をでてしばらく歩く。
スマホを操作して小梅たちが空いているかどうか尋ねようとした時だった。
「由良ぁあああああああああああああああああ!」
「あん?」
学生服を着た男子生徒の群れが現れた。