作品タイトル不明
46「イベントがないとかやばくね?」③
昼休みが終わり、少し眠気を覚えながら授業を終えた。
ホームルームを終え、あっという間に放課後になってしまった。
「……やばい、このままじゃイベントが起きずに一日が終わってしまう」
「由良っちのイベントは殺伐としているから起きない方がいいんじゃないかな」
帰り支度をしている片岡が隣の席で苦笑している。
彼の右隣では森が身支度を整えて片岡を待っていた。
初々しい恋人は、放課後デートなのだろう。
昨日の今日であるが、月読命が気にかけてくれているので二度目はないだろう。
夏樹もふたりが向島市から出なければ、すぐに駆けつけることができるように彼らの気配は完全に覚えた。
(あとで都さんにもふたりのことをお願いしておこう。あとすさすさにもお願いしちゃおうかな)
念入りにしておいた方がいいだろう。
それくらいしないと、少し心配だった。
夏樹は守ることを得意としない。
攻撃は最大の防御と思っているくらいなので、何かされる前に殺すのがスタイルだ。
しかし、そのスタイルも地球では難しい。
異世界では住民たちのことなど何も気にしなかったが、地球では気にしてしまう。
向島市という故郷を狭く思ってしまうことがたまにあるのは、強すぎる力を持つ夏樹にとって仕方がないことだった。
「勇者ですから常にイベントがないと」
「いやね、そんなブラック企業に勤めるサラリーマンみたいな勇者って」
「――え?」
「……そんな信じられない、みたいな顔をされても困るんだけど」
森の何気ない言葉は、夏樹にとって衝撃だった。
「そうだよねぇ、由良っちだけじゃなくて俺たちって二度とない中学生の日々を送っているのに、仕方がないとはいえ厄介ごとに巻き込まれちゃっているからこそ、何もない日は全力で遊ぶとか休むとかしたほうがいいんじゃないかな」
「由良だって友達いるでしょう? ご飯とかカラオケとか、やることいっぱいあるじゃない。あと受験生なんだから勉強もしなさいよ」
「…………その発想はなかった」
「嘘ぉ?」
「嘘でしょ!?」
思い返せば、以前は――と言っても一ヶ月も経っていないことだが、今ほどイベントに日常を圧迫されていない頃は、小梅たちと楽しい時間を過ごしていた。
最近は学校に行き出したことや、各方面からのイベント襲来のせいで交流の時間が取れていない。
「朝と夜以外顔をちゃんと合わせることができないなんて……このままじゃ倦怠期の夫婦みたいになっちゃう」
「もっと中学生らしい例えをしなさいよ」
「ありがとう、森さん、片岡くん。俺、明日から学校サボって毎日遊ぶね!」
「違うよ!?」
「ちょっと!? あんた極端なのよ!」
「……あれぇ?」
「そうじゃなくて、そのイベントがない時間を大事にしなさいってこと。もう、面倒な男ね! 放課後にすることないなら、友達と遊べばいいじゃないってことよ! あ、ちなみに私と片岡くんは放課後デートだから、遊んであげないからね」
「そこは遊んでよぉ!」
「嫌よ!」
「森さんたら、片岡くんと不純異性交遊するつもりだ!」
「――甘いわね、私に不純は一切ないわ」
「……かっこいい」
森は、とても男前だった。