作品タイトル不明
44「イベントがないとかやばくね?」①
「おかしい……イベントが発生しない」
昼休みの屋上にて、由良夏樹は森陽菜と片岡慶の三人で昼食をとっていた。
「由良……何を言っているの? もともと変だけど、もっと変になったの?」
「イベントって、何かあったっけ?」
夏樹の言動に森が眉を顰め、片岡が不思議そうな顔をする。
「変って酷いよ!」
「だって言動が変じゃない。いつものことだけど」
「だって! 俺って、毎日何かしらイベントに巻き込まれているんだよ!? それが、今日に限って朝起きて、朝食食べて、学校に来て、森さんから顎に天下取れそうなアッパーくらって、授業受けて、お昼ご飯て――普通の学生じゃないか!」
「普通の学生の何が悪いの?」
「悪くはないんだけどさ……俺は、イベントさんなしじゃ生きられないように調教されちゃっているんだ」
「……言いたいことはなんとなく伝わるけど、意味がわかんないわ」
悲しいかな、三日で人間は慣れてしまう。
すっかり夏樹はイベントばかりの日々に慣れてしまったのだ。
「もしかしたら放課後にビッグイベントがあるかもしれないよ?」
「――っ、それだ!」
「いや、それだ、じゃないから。あんたね、もしかして昨日みたいなことが毎日のように起きているとでも言うつもり?」
「うん」
「…………え?」
「…………え?」
「どうしたの、ふたりとも。そんなお前嘘だろ、みたいな顔をして」
夏樹の昼食はサタンさん特製お弁当だ。
おかかのおにぎりと、鮭のおにぎりに、おかずが色とりどりに入っている。
焼いた鮭をほぐしてご飯に均等に混ぜ込み、サタンの愛情を込めてしっかり握ったおにぎりだ。
おかずには、王道の厚焼き卵、アスパラのベーコン巻き、ミートボール、ほうれん草の胡麻和え、きんぴらごぼうだ。
このお弁当をまさか魔界を統べる魔王サタンが作ったとは思うまい。
「おーい、いつまでも変な顔していないでご飯食べなよ。昼休みだって無限じゃないんだから。あ、サボるなら付き合うよ!」
「サボらないわよ。いろいろ突っ込みたいことはあるけど、どうせ言うだけ無駄でしょうから言わないでおくわ」
「由良っちが由良っちだってよくわかったよ」
「よくわかんないけど、ふたりがそれでいいならいいんだけど」
なんのこっちゃ、と夏樹が不思議そうな顔をしていると、屋上に月読が現れる。
「夏樹くん、ここにいましたか」
「あ、月読先生。こんにちはー!」
「はい、こんにちは。森さんと片岡くんもご一緒でしたか」
月読が眼鏡を外し、ハンカチで目元を拭った。
「夏樹くんと一緒にご飯を食べてくれるお友達がいるなんて。本当によかった」
「ちょっと!?」
いろいろ迷惑をかけてしまっている月読が相手であるが、まさかまったく友達のいないボッチと思われていることにさすがの夏樹も抗議の声を上げた。