軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

43「いつるさんが戦うんじゃね?」②

「あ、すみません。なんだかとても気持ち悪かったので、つい」

いつるの手にはいつの間にか抜刀されていた刀が握られていた。

刀身は曇りひとつない。

花粉症の神は、いつるが本当に寝取られの神を斬ったのかと疑問に思うほどだ。

しかし、実際問題として寝取られの神は絶命している。

『十天』には及ばないものの、武闘派の神だったはずが、何もできずただ斬り殺された事実に、冷や汗が流れた。

「よくもぉ! よくも寝取られの神を! 奴は、外見に似合わない寝取られ好きな困った性癖の持ち主だったが、気のいい神だったというのに! お前に寝取られの神が何をしたというのだ!」

「やめなさい、剣の神!」

剣の神と呼ばれた神は虚空から刀を取り出すと、腰に当て身構えた。

「ほう」

「私を人間程度に殺された剣の神と同じに思うな! 数多いる神ではあるが、私の技量は奴よりも上だ!」

「御託はいいので、どうぞ。剣の神を名乗るのであれば、それなりに強いでしょう。我がギャラクシー流とどちらが上か決めましょう」

いつるが刀を軽く握る。

剣の神が大きく息を吐き、消えた。

「おっと」

少しだけ驚いた声をいつるが出したと同時に、彼女の背後で縦横に斬られて四分割された剣の神が身体を散らばらせた。

「すみません、遅かったのでつい」

「――馬鹿な。千人斬り殺した神を」

「愚かな、斬った人数を自慢してなにになりますか? 弱者を千人斬ったところで何も経験になりません。外れ、でしたね。では、あなたはどうでしょうか?」

感情のこもらないいつるの声に、無意識に花粉症の神が一歩退いた。

「花粉症の神ですか。地球には面白い神がいますね。実は、私、花粉症が嫌いでして。好きな人間にはあったことはありませんが、毎年苦しんでいましたね。地球に来たのだって、少し花粉症の時期からずらして来たくらいなんですが……まさか私の前に花粉症の神が立ち塞がるとは……これもギャラクシーのお導きですね」

いつるは今日初めて刀を構えた。

「ふふふっ、あははははははははは!」

「何か面白いことでもありましたか?」

首を傾げたいつるに花粉症の女神が高笑いを続けた。

「そう、あなたも花粉症なのね。ならばちょうどいいわ。私の力を味わいなさい!」

花粉症の女神が神力を昂らせた。

「月読命に存在がバレてしまうのは困りものだけど、あなたの方が恐ろしいわ」

「それはどうも。褒め言葉として受け取っておきま……おや?」

いつるの目から勝手に涙が流れた。

感情に何も変化はない。

それでも涙が止まらない。

「それだけの力がありながらも、花粉症には勝てないのね」

「――まさか」

「そう、今のあなたは花粉症の症状が出ているわ」

「馬鹿な、薬を飲んで」

「ふふ、あははっ! 私は花粉症の神よ、薬など聞くわけがないじゃない! 私の力は、お前たち人間が味わう数倍の症状を与えることができるわ。人によっては死ぬでしょうね。あなたはどうかしら? 涙、目の痒み、鼻水、くしゃみ、呼吸だって苦しくなるでしょう?」

いつるが咳き込み始めた。

早く殺せばよかったと失態を悟る。

まだいつるも若輩の身だ。

辛いを通り越して苦しい花粉症の症状に、思うように身体が動かせない。

「じゃあね、強いお嬢さん。そのまま苦しんで死になさい」

花粉症の女神はそう言い残して消えた。

おそらく力を使ったことで、存在が明るみになったことを危惧し、本気で隠れたのだろう。

「――ギャラクシー流に不可能はなし!」

いつるは魔力を高め、抵抗力を上げた。

すべての魔力を消費して、己の身体を癒した。

膝をつくほど苦しんでいたいつるだったが、しばらくするとゆっくり立ち上がる。

そして、刀を薙いだ。

風が吹き荒れ、いつるを囲っていた花粉が消し飛ばされた。

「……花粉症の神ですか。恐ろしい神でしたね。花粉を吸わせると同時に、花粉症の症状を無理やり与えてくるとは……その挑戦受けました」

刀を納め、いつるは大きく深呼吸を繰り返した。

テッシュを取り出し、鼻をかむ。

「花粉症の神、その名前はしかと覚えました。ギャラクシー流の名にかけて、次は殺します。絶対に殺します」