軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

42「いつるさんが戦うんじゃね?」①

静かな向島市の夜に、外部から侵入者がいた。

侵入者と言っても、誰にでもこの街に出入りする権利はあるため、正しくは違う。

だが、ふたりの男とひとりの女性は、向島市にとって招かれざる客だった。

三人は新たな神々である。

女性に至っては、「十天」に数えられるほど力を持つ神でもあった。

「……あなたたちがUMAを脅すようなことをしたから交渉は決裂。大半のUMAは姿を隠したわ。大失態よね」

「申し訳、ありません」

「反省しています」

女性の嫌味のこもった声に、男ふたりが肩を落とし謝罪した。

不機嫌そうな女性は、顔をそのままにヒールを鳴らして向島市の静かな夜の道を歩く。

女性は、背が高く、白いブラウスと黒のパンツ、そしてヒールを履く二十歳を超えた外見をしている。

スマホを片手に軽快に歩く姿は、モデルのようだった。

そんな彼女の一歩背後を歩く男たちは、体格の良いスキンヘッドと、オールバックに髪をなでつけていた。

スキンヘッドの男は、ハーフパンツにTシャツ、金のネックレスをしている。

オールバックの男は、安物のスーツを着崩していた。

両者とも、柄が悪い。

「なんとか追えたのはモスマン、チュパカブラ、ビッグフッド、イエティ、スカイフィッシュね。この街にいる由良夏樹と接触するつもりなんでしょうけど、面倒よね」

「すでに接触した可能性も」

「あなたたちがトロトロしているからでしょう!」

女性に怒鳴られ、男たちが身を縮ませる。

「はぁ。愛の女神がご執心の子供と敵対したくはないけど、最悪の場合は戦わないとね。絶望の神と、門の神を殺した厄介な子供だから簡単にどうこうできるとは思わないけど、――私の力の前にはなすすべもないでしょうね」

女神には自信があった。

新たな神々に明確な敵対表明をしている月読命に気づかれないように、力を人間まで落としていながらも、夏樹と戦える自信があったのだ。

「モスマンたちの居場所は?」

「向島市にいるとだけしかわかっていません」

「隠れる場所はたくさんあるでしょうからね。ひとつ、疑問なんだけれど、モスマン、チュパカブラ、ビッグフッド、イエティは実際に見たけど、スカイフィッシュって本当にいたかしら?」

「さあ。UMAの中でも本当にいるかどうかわからない奴だそうで」

「俺も見ませんでしたね。一番、見たかったのがスカイフィッシュだったんですけど」

「そうよね。私もスカイフィッシュを一番見たかったわ」

新たな神々でさえ、スカイフィッシュの存在は懐疑的らしい。

「モスマンたちは生け捕りよ。古き神たちにさえ存在を認識されていなかった彼らが本気で隠れてしまったら探しようがないわ」

「個人的に、そのようなUMAを我らの神話に加える利点がわかりませんが」

「馬鹿ね、古い神話に汚されていないからこそ、私たちの神話に加わる価値があるのよ」

新たに神々が生まれるように、怪物も新たに生まれている。

だが、弱い。

神々が倒す価値はなかった。

だが、UMAは違う。

存在の真偽が不明で謎も多い。

そんなUMAだからこそ、新たな神話の怪物に相応しいのだ。

「――また神ですか。特殊な気配がしたので気になって来てみましたが、私が出るまでもありませんでしたね」

「――っ、誰!」

女神たちが振り返り、警戒をした。

神の目を眩ました女神たちは人と変わらない。

だというのに「特殊な気配」として嗅ぎつけた者がいることに驚きを禁じ得なかったのだ。

「いいでしょう。察するに弟子の敵になるのであれば、師匠の私が露払いをしましょう」

少女――いつる・ディロン・マルセー・ロットロット・ナイジェルマリー・赤星が刀を抜いた。

「花粉症の女神よ、大事の前の小事です。ここは私が」

「ええ、任せたわよ。寝取られの神」

「おまかくだ」

――『花粉症の女神』に背を叩かれたスキンヘッドの男『寝取られの神』は拳を握りしめていつるの前に立ち、脳天から左右に分かれて血と臓物を撒き散らした。