作品タイトル不明
29「いつるさんの介入じゃね?」
「――ぐっ、あなたは……何者でしょうか」
「これから死ぬあなたに名乗る必要はないわ」
いつるが刀を握る手に力を入れると、祝福の神が血を吐く。
「ふふふ、あなたにも祝福が必要のようですね。勇ましい少女のようですが、あなたの心は孤独に支配されている」
「あら、そう」
いつるは気にした様子もなく剣を薙ぐ。
祝福の神の腹半分が斬られる。
「ふふ、このくらいの傷ならば…………」
「どうしたの? 顔色が悪いわよ」
「再生ができない、とは……これは何事でしょうね」
腹を抑え、理解できないという顔をする祝福の神は、いつるから距離をとった。
神であろうと死ぬ時は死ぬ。
超再生を持っていようと、絶対に死なないなどということはないのだ。
「夏樹くんが戦うのかと思って見ていましたが、彼の性癖が明らかになっただけで特に面白みもありませんでした」
「興信所の調査では、あなたのような人間はいなかったはず」
「ええ、最近きましたから」
いつるが刀を振るう。
祝福の神の腕が飛んだ。
「首を狙ったのですが、反射神経は悪くないようですね」
「強い。まさか由良夏樹くんにあなたのような仲間がいたとは……失敗しましたね。私も仲間のひとりでも連れてくればよかった。――ですが、そろそろ迎えの時間です」
「その前に殺します」
白刃が祝福の神を襲う。
「いやぁ、させねえってー。おっまたせー!」
空間を曲げて現れた少年によって、いつるの刀が弾かれる。
「新手ですか。いいでしょう。――私の本気を」
「待ってよ、おばさん」
「――おば」
少年はガムを噛みながら、あどけなく笑う。
「はいはい、喧嘩はおーわり。祝福の神ったら、スローペースなんだから相手に合わせて喧嘩しちゃだめっしょ」
「申し訳ありません」
「はーい、回復ー!」
少年が手をかざすと、祝福の神の傷が癒えていく。
「はいよっと」
「すみません、助かりました」
「気にすんなって。んじゃ、帰ろうぜ」
「ええ」
「待ちなさい」
少年が現れたように空間を曲げる。
いつるが刀を構えるが、少年はにこやかに応じた。
「おばさん、やめとけって。もう喧嘩は終わり。それでいいでしょ。俺は祝福の神みたいに紳士じゃないから、一番弱いのから狙うよ?」
「……いいでしょう。その顔は覚えました。次は殺します」
「こっわいなぁー! んじゃ、名乗っとこうかな。俺は、門の神!」
「――っ」
夏樹と千手が息を呑む。
先日、夏樹が殺した神も門の神だった。
少年は夏樹を指差す。
「そっちのガキが調子乗ってた門の神を殺したせいで、十天に強制的に加わるように言われたかいわいそうな門の神だぜ! よろしく! んで、ばいばーい!」
「では、失礼します。そうそう、外の淫魔はきちんと処分することをお勧めします。彼らは、人間を家畜にして飼っていますので」
「おい、待て!」
聞き逃せないことを言い残し、門の神と祝福の神は消えた。
「ちっ、どうにもこうにも意味がわからねえ。とりあえず、淫魔どもをシメて、被害者を助けるところから始めねえとな」
「千手さん、俺も手伝うよ」
「おう、すまねえ。ところで、そちらのお嬢さんは知り合いか? かなり強いようだが」
千手がいつるを気にしている。
敵ではないと考えているようだが、夏樹ができなかった祝福の神へ痛手を与えることができたいつるを警戒しているようだ。
「こちらはいつるさん。――ギャラクシー流の使い手だよ!」
「…………あ、はい」