軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

26「祝福の神じゃね?」①

「ば、馬鹿な。我々淫魔の家畜でしかない人間風情が」

「はっ、言ってくれるじゃねえか」

靴音を鳴らし、千手が淫魔の前に立った。

「子供を巻き込みやがって。人質にした中学生の話だけじゃねえ。てめえたちが好き勝手やった結果、返り討ちにあったからって由良を逆恨みしやがって。このクズどもが」

「な」

「てめえらがいらねえちょっかいをかけるから、由良がいらねえ殺しをしちまったじゃねえか! 大方、そこの神に唆されたんだろうが、――ふざけんな」

千手の拳が淫魔の顎をとらえた。

淫魔が吹き飛び、背中から地面に倒れる。

「――千手さん」

「由良、てめえもてめえだ。強いのはわかっているが、ひとりで突っ走るな。俺はお前より弱いが、それでも大人だ。仲間だ。頼ってくれ」

「……ありがとう、千手さん」

「おうよ。さあ、淫魔はもう動けねえ。あとはこいつをぶっ飛ばして、帰ろうぜ」

――拍手が響く。

新たな神々の男が、感動したように大きく手を叩いている。

「素晴らしい! 私は、友情を確かに見ました! いや、家族愛、親愛というべきでしょうか! 人が人であるからこその感情! 嗚呼、すばらしい!」

「……やっぱり新たな神々っていうのは、どいつもこいつもキマってるな」

千手の夏樹への想いに感動したのか、神は涙を流して拍手をしている。

これには千手はもちろん、夏樹でさえドン引きだ。

いつの間にか目を開けていた、森と片岡でさえ「うわ」と無意識に声が出てしまっている。

「失礼。私は感動系に弱いのです。先日も、感動系の動画を見ていたら三日も経っていました」

「見過ぎだろ!」

「まったくもっとその通りです。他の神々と会議があったのですっぽかしてしまい叱られてしまいました。――さて」

神の雰囲気ががらりと変わる。

夏樹が魔剣を構え、千手も拳を握る。

「そう警戒しないでください。今日は、挨拶に来ただけです」

「なんだって? 俺の大切な学友を攫っておいて、挨拶とかなかなか面白いこと言ってくれるじゃない。面白かったから、三枚におろしてやるよ」

「魅力的な提案ですが、まず誤解を解きましょう」

神は大きく手を広げる。

抵抗しないと言わんばかりだ。

夏樹は斬りかかろうと思ったが、目の前の神が淫魔どもとは比べものにならないほど強いことは肌で感じていた。

森と片岡を巻き込む可能性があたったため迂闊に戦いを始められない。

「淫魔たちの愚かな行動に心から謝罪します。力を与えた身としては、まさか人質を取るという愚かな行動を取ることは思ってもおらず……力を与える者を間違えたと、ただただ己の見る目のなさを嘆くばかりです」

倒れている淫魔が、ショックを受けたように大きく目を見開いた。

「力を与えたというのに、人質を取るという弱者であると主張をするとは呆れています。淫魔たちは全て私が責任を持って殺しましょう。今回はそれで手打ちにしてくれませんか?」

「あんたは結局、それで何がしたかったんだよ?」

「君がどんな人間か知りたかっただけです。門の神を、絶望の神を殺したギャラクシー河童勇者由良夏樹をね」

「おいっ、由良ぁ! お前、敵にまでギャラクシー河童勇者って認識されているぞ! いい加減、それでいいのか!?」

「何言ってるの、俺は生まれも育ちも立派なギャラクシー河童勇者だよ!」

「嘘つけ!」

新たな神々がどのような情報網を持っているのか不明だが、まさかきちんと夏樹をギャラクシー河童勇者と認識しているとはさすがの千手も想定外だった。

森と片岡だって、「由良ってマジでギャラクシー河童勇者なんだ。ていうか、ギャラクシーってなんで!? 勇者と河童とどんな関係があるの!?」と動揺を隠せずにいる。

「んで、さっきからべらべらと言いたいことを好き勝手に言ってくれているけど、そんなあんたはどちら様?」

「おっと、これは失礼しました。――私は、祝福の神」

男――祝福の神は胸に手を当ててお辞儀をした。

「新たな神々の中で選ばれた十天に数えられる、神です」

「……十天って……ださっ!」