作品タイトル不明
27「祝福の神じゃね?」②
「…………子供というのは時に心を刺すようなことを言いますね」
祝福の神はあからさまに肩を落とした。
「しょんぼりすんな!」
「私も十天など名乗りたくありませんが、十天は名乗りの際に十天と言わなければいけない謎ルールがあるのですよ」
「嫌なルールだね!」
「一応、新たな神々の中で十指に入る上位の神だけが許されるのが十天という立場なのですが」
「他には?」
「絶望の神、愛の女神、門の神ですね」
「絶望の神はぜっくん? 愛の女神は……愛ちゃんでいいのかな?」
「はい」
「じゃあ、名乗ってなかったし!」
「そんな……みんな名乗っていると自己申告していたのに」
絶望の神ことぜっくんも、愛の女神愛ちゃんからも「十天」という言葉を聞いたことはない。
(ははーん、もしや祝福の神が自称しているだけだな。実際、十天なんかいねーと)
少し、神に親近感を覚えた。
「ふざけるな! ふざけるな、貴様たち!」
千手に殴り飛ばされた淫魔が憤怒の表情を浮かべて立ち上がる。
「聞いていれば、我ら淫魔を馬鹿にしおって!」
「実際雑魚だろ」
「私の力を与えたというのに力の持ち腐れでしたね。――返してもらいましょう」
祝福の神が軽く腕を振る。
淫魔から感じていた魔力ががくんと落ちる。
「雑魚が雑魚以下になっちゃったね。人間を家畜とか言ったけど、お前は家畜以下だよ」
「おのれぇええええええええええええ!」
淫魔がついにキレた。
夏樹に掴み掛かろうと手を伸ばす。
後先考えない行動だったのか、それともなけなしの力を振り絞っての意地だったのかわからない。
しかし、淫魔は夏樹に触れることさえできなかった。
「――悪あがきはみっともないですよ。あなたたち淫魔は人間に敬意を払わず、家畜とした。しかし、それはあなたたちが人間よりも強かったからです。では、あなたたちよりも強い人間が現れたら……立場が逆転するのは至極当然のことなのです」
祝福の神が淫魔の首を掴む。
淫魔は血走った目をして抵抗しようと暴れる。
「――祝福あれ」
祝福の神が無機質な声を出したと同時に、淫魔は白目を剥き、灰となって崩れた。
「おっと」
手が灰まみれになってしまった祝福の神は、ぱんぱんっ、と手を叩く。
「外にいる淫魔たちも私が処分しましょう」
「――余計なことするな」
「おっと、これはなにか私は気に触ることをしてしまいましたか?」
「その前に、その笑ってねえのに笑っている顔やめてくんない。気持ち悪い」
「これは手厳しい。笑う癖をつけていたら張り付いてしましてね、ご容赦を」
「……で、祝福の神の祝福が殺すことっていのはずいぶんと退屈だな、おい?」
夏樹は軽く地面を蹴って肉薄する。
魔剣を縦に振り下ろし、祝福の神を斬り捨てようとする。
「これは怖い」
しかし、祝福の神は腕で夏樹の一撃を受け止めた。
「へぇ」
魔剣は祝福の神の骨で止まっていた。
血が流れるが、祝福の神は貼り付けた笑みを動かしはしない。
「君が全力であったら話が違うのでしょうが、残念です。誤解されているようなので、説明させていただきますね。私は、誰かを幸せにするのが好きなのです。祝福を与えたいのです」
「……死が、祝福とかつまんねーこと言ったら今からガチバトルだぞ」
「ははは、そんな陳腐なことは言いませんよ。ただ、淫魔にとって死んだ方が幸せでしょう。人質を取り、君に目をつけられてしまった。私に役立たずだと認識されてしまった。辛い思いをして生きていくのなら、死んだ方が幸せです」
「独善的だな」
「神ですから。私は、幸せな方には何もしません。たとえば、そちらのご友人たちは初々しい恋人ですね。とても幸せそうで、見ているこちらの心が暖かくなります。そちらの魔眼使い殿も、明らかにリア充!」
「おい、待てや!」
「対して、由良夏樹くん、君には祝福が必要だ」
「……なんだと?」
「――君は不幸な子です」
断言した祝福の神に、夏樹が「へえ」と興味を持ち話を聞く体勢となる。
「異世界に勇者として召喚され、殺伐した日々を過ごした。中学生には不必要すぎる力を得てしまい持て余している。その力のせいで我々新たな神々に目をつけられた。挙げ句の果てには、ギャラクシー河童勇者を名乗る心の弱さ! ――君は、不幸で悲しい子です」
「めっちゃ言うな! お前!」