作品タイトル不明
「コミカライズ開始記念SSじゃね?」
由良家の茶の間。
青山銀子はスマホを握りしめ、プルプルと震えていた。
そして、大きく息を吸い込み叫ぶ。
「異議ありぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっす!」
「え? なんで? なんで急に叫んだの?」
「発作かのう?」
「ていうかワイドショー見てるでしょう。うるさい」
「ひどいっす!」
突然すぎる銀子の雄叫びにも夏樹が目を白黒させ、小梅が案じ、星槍さんが顔を顰めた。
「で、どうしたの急に? お酒なら晩御飯まで待ってね」
「……夏樹くん、いくら私でも昼間っから酒は飲まないっすよ」
「え?」
「え?」
「そういう茶番はええんじゃ! あと銀子、おどれは昼間でも飲む時は飲むじゃろう!」
「オフの日は飲むっすよ! 今日はお仕事がある日なので飲まないっす!」
夏樹の記憶では、割といつも飲んでいる気がするが、まあいいだろう。
それよりも、銀子が何に対して異議ありと叫んだのか気になる。
「んで、どうしたの、銀子さん?」
「これっすよ! これ!」
「……んん? コミカライズ版の1話じゃん! 2025年4月1日から連載のコミカライズ版の1話じゃん!」
「…………二度言ったっすよね」
「言ったけどさ。これがどうしたの?」
夏樹が尋ねると、銀子がスマホの画面を見せたまま叫んだ。
「きえぇえええええええええええええ! ヒロインの中で夏樹くんと最初に会うのは私のはずっすのに! なぜか水無月都さんが先にコンタクトしているっす!」
「あー」
「しかもコミカライズのバナーにも私いないっすけど!」
「あー」
「こけぇえええええええええええええええええ!」
「叫ばないでよぉ。銀子さんもちゃんと出るから!」
「本当っすか!? コミカライズに登場しないとかないっすよね!?」
「ないない! なっちゃん嘘つかない!」
「……なら、見守りましょうっす! この美しくも可愛らしい魔剣大好きちょっとおちゃめな銀子さんの登場を!」
「盛るなぁ!」
「ていうか、ヒロインで最初に出会ったのは私なんだけど」
星槍さんがぼそりとつぶやくが、銀子の相手をするのは面倒臭かったのか、「ま、いいわ」とワイドショーに集中する。
「ま、真のヒロインは俺様じゃけどな!」
「ははは、まだまだ銀子さんは本領発揮してないだけっすから! ちょっと本気出したら、健全じゃ済まないっすから!」
「それでええんか!?」
「それでこそ青山銀子っすから! んじゃ、とりあえず。コミカライズが始まったってことで、かんぱーいっす!」
「いや、結局飲むんかーい!」
小梅のツッコミは響き渡るが、銀子が腰に手を当てて風呂上がりの牛乳よろしくビールを飲む姿に、ごくり、と喉を鳴らす。
「まあ、コミカライズ開始記念じゃしな!」
「私もいただくわ!」
「じゃあ、改めてかんぱーいっす!」
「うぇーい!」
「いえーい!」
「……結局飲むじゃん! なっちゃんお酒飲めないんですけどぉ!」