軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第30話「青春をしてみたい今日この頃!!!」

ーーー翌日

朝一番に教室へ入ってきたエリクが、俺の顔を見るなり言った。

「——で?」

「なんだ......」

「仲直りできたのかって聞いてる」

窓際の席に鞄を置きながら、俺は少し考えた。

昨日の雨。

路地裏。

泣きそうな顔をしたセレフィーナ。

それから——あの言葉。

思い返した瞬間、胸の奥が妙に熱くなる。

「……まあ、一応は」

「一応って顔じゃないな」

「そうか?」

「お前、今めちゃくちゃ機嫌いいぞ」

言われて初めて気づく。

昨日まで胸の奥に引っかかっていた重さが、綺麗になくなっていた。

窓の外は快晴だ。

昨日の雨が嘘みたいに、青空が広がっている。

その時.......教室の扉が開いた。

「おはようございます」

空気が変わり、銀色の髪が朝日に透ける。

セレフィーナだった。

男子たちの視線が一斉に集まる中、彼女は迷うことなく真っ直ぐこちらへ歩いてきた。

「おはようございます、レイン」

「……おはよう」

昨日までのぎこちなさが嘘みたいに、自然に返事を返すことができたことに、静かな喜びを覚えていた次の瞬間.......

セレフィーナが小さな包みを、俺の机に置いた。

「?」

「……お、お菓子です」

教室が静まり返る。

俺も止まった。

「……お菓子? なんで?」

「勘違いはしてほしくないんですけど、あなたのために作ったわけではないんですよ! 単なる余り物です! ただ......せっかく作ったのに、捨てちゃったら勿体なじゃないですか!」

早口で捲し立ててくるセレフィーナ。だが、耳が少し赤い。その瞬間、男子たちがざわついた。

「殿下の手作り!?」

「リア充爆発しろ!!」

「昨日何があったんだお前ら!!」

エリクが隣で吹き出す。

「お前、完全に終わったな」

「えまだダメなとこでもあったか?」

「別の意味でだよ」

俺は少し困って、それから小さく笑った。

「……ありがとう」

「.......っ」

セレフィーナの肩がぴくりと揺れる。

そして視線を逸らしながら、小さく言った。

「……どういたしまして」

破壊力があまりにも高すぎる。思春期の男子たちはすでに効果抜群で瀕死だ。

「甘っっっ!!」

「朝から俺たちは何見せられてんだ!?」

「尊い……!!」

「うるさいですよ!」

セレフィーナがぴしゃりと言う。

でも今日はどこか機嫌がいい。

完全に隠しきれていなかった。

そこへ......

「え、なにこの空気??」

後ろからアイラが顔を出した。

数秒固まり——。

「甘ぁぁぁっっ!!」

朝から大声だった。

「仲直りしたの!? っていうか付き合った!?」

「「まだ付き合って”は“ない!!!」

二人同時にそういった時教室が静まる。

そして.......

「まだ!?!?」

アイラの絶叫が響いた。

---

ーーー昼休み

中庭には、雨上がりの匂いが残っている。

俺たちはいつもの場所で弁当を広げていた。

「……本当に美味しいな」

「本当ですか?」

セレフィーナの顔がぱっと明るくなる。

その反応が妙に可愛くて、俺は少し視線を逸らした。昨日から、おかしい。やたらと彼女の表情に目がいく。

そんな時だった。

「あ、あの……!」

控えめな声。

振り返ると、小柄な女子生徒が立っていた。

栗色の髪を揺らしながら、緊張した様子でエリクを見る。

「エリク先輩!!」

「えレインじゃなくて……俺?」

珍しくエリクが間抜けな顔をした。

少女は顔を真っ赤にしながら、小さな紙袋を差し出す。

「いつも図書室のお仕事、手伝ってくださってありがとうございます……!」

周囲が静まり帰る。

エリクが完全停止したのを見て、アイラが俺の袖を引っ張った。

「エリクがフリーズしてるぞ」

「あのままでいいのか?」

「面白いからよし!!!」

「やばい.......超面白いっ!」

セレフィーナが少し吹き出した。

エリクは数秒固まったあと、ようやく口を開く。

「……なんで、俺に」

「そこからですか!?」

アイラが即座に突っ込む。少女も少し涙目だった。

「えっと……そんな大層な理由ではないんですけど........優しくしてもらったので……」

「……」

「重い本運ぶの、いつも手伝ってくれたり……雨の日、送ってくれたり……」

エリクが黙る。たぶん、本人は無意識での行動だったのだろう。でも、その子にとっては違ったんだろう。ちゃんと覚えていて、ちゃんと特別だった。

俺は隣で小さく笑った。

「エリク」

「……なんだ」

「俺の友人が言ってたことなんだが、誰にでも同じ対応をしてると、勘違いされるらしいぞ」

一秒後

エリクの拳が俺の脇腹に綺麗にめり込んだ。

「っ、痛っ!?」

「今それ言うか普通!!」

「仕返しかよ、短気な男はモテないぜ?」

「短気じゃねえし!! てか殴られて当然だろ!!」

その瞬間、中庭に笑い声が広がった。

昨日までの重苦しい空気が、少しだけ遠くなる。

青空の下.......

隣ではセレフィーナが、小さく笑っていた。

——きっと、この平穏は長く続かない。

冥境の門印、世界の境界、俺が持つ力の、本当の意味.......いずれ必ず向き合う日が来る。

それでも今だけは.......こうして笑っていたかった。隣にいる彼女を、見ていたい。

そんな普通でありふれた感情が俺の心のうちを埋め尽くしていた。その事実に気づいた俺は少し微笑みながら言葉を溢す。

「セレフィーナ.......お前となら俺の運命に打ち勝てるかもな」