作品タイトル不明
第21話「超絶美少女セレフィーナちゃんとの生活は最高かも!?」
学園長が俺に近づいてきた。
「ノクス君」
「はい」
「三年前の記録について——正式に訂正します。あなたの名前で、記録を残させてください」
「別にそういうのはいいよ、俺は」
「あなたが良くても私たちからしたらよくないことなのです。あなたがやったことは、ちゃんとあなたの記録になるべきです。——それと......」
「それと?」
「今日、魔鳥を追い払ったことについても。これは正式な記録として残します」
「本当に大したことはしてないはずなんだけどな.......」
「あなたは本当に鈍感というか、なんというか......とにかく大したことをしたのですよ、君は」
「まあ……勝手にどうぞ」
「そのお言葉、承りました」
学園長が去り際に、小さく笑った。
「——やっぱり、変わらないですね、君は」
「俺の何を知って言ってんのか......」
「いろいろ、ですよ」
---
セレフィーナが俺の隣に来る。
「……怒らないんですか」
「一体何を怒る必要が?」
「三年前の功績を、奪われていたことについてですよ!」
「怒る、というほどでもない。俺が気にしてなかった、それだけの話なんだよ」
「私は怒っています!」
セレフィーナの声が、静かに低くなった。
「あなたがやったことを、他の人間が横取りしていた。それがーーー許せないんです」
「調査官の方が処理してくれたんだからもういいじゃないか」
「もー! そういう話じゃないですよ!」
「言わなきゃわからんのかな.......俺はな、セレフィーナが怒ってくれるだけで、十分すぎるんだよ」
「……」
「この言葉は嘘でもなんでもないからな」
セレフィーナがしばらく黙り、それから静かに言った。
「……今日、初めて怖いと思いました」
「え、俺を......?」
「違います」彼女は首を横に振った。「あなたが怒った時の、あの声が」
「別に怒鳴ったりしたわけでもないだろ」
「だからこそ、怖かったんですよ」セレフィーナはまっすぐ俺を見た。「大きな声じゃなかった。でも——絶対に引かない、そんな強い意志を他者に圧として感じさせる程の声でした。あんなに冷たい声、初めて聞きました」
「……二人のことを、物みたいに言われからな」
「知っています」
「それは——まあ、怒っても仕方がないというか、なんというか......」
「そういうところが」
セレフィーナは少し目を細め、俺の耳元に口を寄せてくる。そして一言、こう囁く......
「大好きですよ」
ーーー
少しして、どうも気恥ずかしいような、そんな空気感が漂っている中、アイラが「私にも怒ってくれたよね!!」と割り込んできた。
「当たり前だ、お前も俺からしたら十分すぎるくらいに大事な人だからな」
「やった!! 嬉しい!!」
「そんな喜ぶことでもないだろうに.......」
「大事だから怒ってくれるんでしょ!! 嬉しいに決まってるじゃん!!」
「……そういうものなのかね? 女子って難し」
「そういうものなの!!」
エリクが「俺の時は.......」と恐る恐る聞いてくる。
「エリクも、もちろん大事だぞ......たぶん」
「たぶんってお前......怒ってくれるのか?」
「それは時と場合によるな」
「状況次第かよ!! 扱い違いすぎだろ!!」
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日が沈みだし、もともと青一色だった空という名のキャンバスを、幻想的なオレンジ一色に染め上げる。
アイラが「今日のお祝いに飯作る!!」と叫んで、厨房に走っていった。
「お祝い、って一体何のだよ.....」
「全部!! 魔鳥のも!! 英雄がやっつけられたのも!! レインがかっこよかったのも!!」
「お世辞はやめてくれ、昔、女子にいじめられていた時の記憶が蘇る.......」
「今日のはほんとにかっこよかったもん!!」
「例えば.....?」
「全部!!」
「まったく答えになってないぞ」
「そんな細かいことは気にしない!! とにかく全部なの!!!」
アイラが厨房に消え、残された廊下でセレフィーナが静かに言った。
「……かっこよかったです」
「セレフィーナさんまで」
「事実なので」
「……そうですか」
夕日が廊下の窓から差し込んでいた。オレンジの光が石畳に伸びて、長い影を作っていた。
「レイン」
「はい」
「今日——ありがとうございました」
「俺は何もしてないですよ」
「してます」
「感知して、流れを止めただけで——」
「怒ってくれました」セレフィーナは静かに言った。「あなたが怒ってくれたことが——嬉しかったです」
俺はしばらく黙った。
「……そうですか」
「そうなんです」
廊下の奥からアイラの「早く来い!! 飯できる!!」という声が届いた。
夕日の廊下を、全員で歩く。
前でアイラが叫び、エリクが血圧を心配している。そんな現状をみて、俺があいも変わらずため息をつく。
俺はなんとなく、今日のことを振り返った。
魔鳥が来て、ゼルドが連行されて、三年前の功績が今、俺のものだとわかった。
色々あった。
でも——
「……こんな慌ただしい生活も、案外悪いもんではないかな」
「何がですか」とセレフィーナがキョトンとした顔で聞いてくる。
「いや......何でもない。こっちの話だ、気にするな」
セレフィーナが少し目を細めて、ニヤニヤといういやらしい笑みを浮かべる。
「こんな慌ただしい日常も、この超絶美少女セレフィーナちゃんといれば、悪くないかなってこと......ですよね?」
「なっ......! 今日のも、これまでのも、全部、全部.......お前のせいだからなー!!!」