作品タイトル不明
第11話「レインの学園ハーレム with 美女二人!」
アイラが言った。
かすれた声だったが、はっきりと聞こえる。
「……先に一本取ったにも関わらず、次が取れなかった。私の負けだ」
セレフィーナがゆっくりと目を開ける。
「……ありがとうございました」
「こっちこそ。楽しかった」アイラは膝をついたまま、にっと笑った。「あなた、本当に強いね!」
「あなたもですよ!」
「また勝負しようよ!」
「もちろん!いつでもお持ちしております!」
「何平和な感じで終わらせようとしてんだ、あいつらは.....当人は全く了承してないっての」
そんな軽口を叩きつつも、知らず知らずのうちに自分の口角が上がっていることに今気づいた。
「まあ、こーいうのもありってか」
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演習場の外の石段に、俺とエリクは座っていた。しばらく、二人で黙って今の試合の感傷に浸っていると.......夕焼けが広がってきていた。
演習場の方から足音が二つ、並んで近づいてくる。
「——いたいた!」
アイラだった。右腕に布を巻いていはするものの、声はいつも通り元気いっぱいという様子だ。なぜかその隣をセレフィーナが並んで歩いてきていた。
「なんで二人一緒の来てるんだ」
「私たちはいわば“マブ”だ!」とアイラがそう言い切ったのに対しセレフィーナはというと......
何も言わずに、ただ頷いていた。
「なんでそんな仲良くなるかな、俺の面倒事が増えるだけだから是非ともやめてほしいな」
「しょうがないだろ!気が合うから!」
「….さっきまで敵対していなかったか?」
「戦ったら仲良くなった!」
セレフィーナが「それに....」と静かに補足した。
「この子はレインの実力を最初から見抜いていましたから!」
「はあ......そういうものか」
「「そういうものです!」」
また二人の声が揃う。
エリクが「俺には到底わからん世界だ」と小声で言った。
アイラが俺の真正面にずかずかと歩いてきて、腕を組む。
「レイン!」
「何だよ、いきなり」
「今日の戦い、ちゃんと見てたか?」
「当たり前だろ、そこのアホと横並びで見てたわ」
「......ん?もしかしてだけどサラッと俺貶された!」
「そんなことは置いといて、感想は?」
「……まあ悪くはなかったんじゃないか?」
「それだけ?」
「それだけだな、だって.......」俺はそう付け加え、あの戦闘を見ていて率直に思ったことを口にする。
「お前ら、あれ本気じゃないだろ? 強い強い言われてるお前らの動きが俺程度の目で追えるとは思えないし.......」
「……ねえ」アイラが鼻と鼻が触れ合いそうになる一歩手前まで、顔を近づけてきた。
「私、実は今日ものすごく頑張ったんだけど!」
「だからちゃんと見てたって」
「見てたらそんな感想が出てくるわけないんだよ!私たち普通の人じゃ、残像すら見えないような速度で戦ってたんだけど!? ねえ? セレフィーナ?」
「ニコッ!」
「あだめだこれ、もう諦めてるっていう表情してる......」
「もう、手慣れたものです!」
「なんで!!!」
アイラが地団駄を踏んだ。本当に踏んだ。石畳がどんっと鳴り響く。
「信じらんない!! あんなに頑張ったのに!!」
「頑張ったのはわかってるって!ただ、もっとできたんじゃないかなー、と」
「ぐっ……!!」
アイラが悔しそうに唸った。
セレフィーナが俺の隣に来て、小声で「ふふ」と笑った。
「なんで笑ってるの、セレフィーナ!?」
「笑っていませんよ......ププッ!」
「やっぱ笑ってんじゃん!」
「……少しだけですよ」
アイラが「もー!セレフィーナ!笑うの禁止!」
「ごめんなさいって!」
「謝り方が全然反省してない!!」
「そうですか、それは残念です」
「そんな子犬のような目で見つめても私は屈しないぞ!!.....いやちょっと待て、可愛すぎるな」
「おい、理性ちゃんと仕事しろ!」
アイラがぷりぷりしながら俺の隣に座った。
なぜか、アイラとセレフィーナによって挟まれる形になる。
「……なんでわざわざ隣に座るんだ」
「セレフィーナだけはずるっこいからな!」
「領域◯開!【俺ノ領域】 ここは俺の領域なんだ、お前はなす術を持っていない!」
「広いんだからいいじゃん、石段!」
「俺のボケは華麗にスルーとな」
「ごちゃごちゃ言うなー!!」
セレフィーナが反対側からジリジリと詰め寄ってくる。
「何二人でいちゃついてるん! 婚約者(仮)は私ですよ!」
「……俺の領域◯開が両方向から攻撃されることで押し負けて入るだと!?」
「ありがとうございます!」
「あの......ちゃんとつっこんでくれない?」
「「めんどい」」
その頃、レイクはと言うと......
(俺なんでこいつの、「ハーレム学園生活 with 美女二人」を見せつけられてるんだろ.....)
表面上は微笑みは崩していないものの、内側のライフポイントは徐々に削られていた。
三人と外野一人で石段に座り、夕焼けを見ていると、幻想的な光が演習場の向こうに広がっていた。
オレンジと赤が混ざり合って、雲の端が金色に染目上げている。
「……めーっちゃきれいじゃんー!」
「そうですね、これがいわゆる“エモい”ですね」
しばらく三人と外野一人で黙っていると、少ししてからアイラが口を開いた。
「ねえ、レイン?」
「どうした? そんな改まって......」
「私!諦めてないから!」
「……まあ、そうだろうなとは思っていたが、ここまで堂々と宣言してくるとは、」
「次はもっと強くなって来る!」
「そこで、私可愛くなるから!とかじゃないことに好感は持つな」
「ふふん! でしょー! 次は今回みたいには行かないんだから! 絶対セレフィーナに勝つ!」
「ま、せいぜいがんばれよー」
「レイン!?なんで応援するの!?もしかして......」
「浮気ではないからな! ただ強い人やつを見るのは好きなんでな.....」
アイラがまた唸った。
「このひと……!!」
「レイン、そういうところですよ」セレフィーナが静かに言った。
「アイラ.....これだけは覚えておいてください。この人の言葉を鵜呑みにしすぎると“堕ちます”!」
「堕ちちゃうの!?」
「人を勝手にやばいやつ扱いするんじゃない!」
「まあまあ......で、どうやって対応するの!!」
「……私も今、慣れている途中なので」
「一緒に慣れる感じ!?」
「そういうことになりますかね」
アイラが少し黙り、笑いながら口を開いた。
「……それはそれで、なんか面白いな!」
「そうでしょう」
「セレフィーナ、私あなたのこと嫌いじゃないよ!うんうん.....むしろ好きなぐらい!」
「私もですよ!」
「恋敵であることに変わりはないけどね!」
「ですが......」
「ぜーったい!負けないんだから!!」
「こちらこそです!」
二人がにこっと笑い合った。
俺はよくわからなかったが、なんだか仲良さげな感じがしたので邪魔はせず夕焼けを見た。
と、そこで。
セレフィーナがすっと立ち上がった。
制服の裾を直して、髪を整えて、少しだけ胸を張る。それから、アイラを見下ろして言った......
「アイラさん!」
「なに?」
「一つだけ、言わせてください」
「……なんか改まってるじゃん。どうした」
セレフィーナは、にこりと——完璧な笑顔で、言った。
「これが“正妻”の力です」
「…………」
「……」
石段が、静まり返る。
エリクが「今なんつった」と聞いてきたが、俺は目を向けたくなかったため、放心という名の現実逃避をしていた。
アイラが立ち上がった。
「……今、なんて?」
「”正妻“の力と言いました」セレフィーナは全く表女を崩さずにに繰り返した。「覚えておいてください!」
「ぜ、絶対に認めないからな!!」
「認めなくても構いません。事実なので」
「ぐぐぐ……!! 大人ぶりやがって! これが大人のよゆうってやつか!」
アイラが悔しそうに地面を踏んだ。
アイラの悔しそうな表情を見た後、セレフィーナは満足げに笑顔を浮かべ、スタスタと一人で行ってしまった。
「これが......本当に大人のすることかな......?」
「……あの人」アイラが呆然と見送りながら言った。「なんかものすごくドヤってなかったか?」
「これでもか!ってぐらいドヤってたな」
「普段からあんな感じなのか?」
「普段はもう少し穏やかなはずなんですけどね」
それから少しして、「次は絶対負けない!!」とアイラは叫んで、セレフィーナと反対方向に歩いていった。
残されたのは俺と外野担当だけ
「……なあ、レイン」
「皆までいうな、俺が一番わかってる」
「そうだよな.......お前も苦労してるんだよな」
「いきなり親身になってどうした、気持ち悪い」
「おい! 前から思ってたけど、お前俺に対して当たり強くない!?」
「信頼があるんだよ」
「......そんな信頼は要らなかった。てか、俺はお前と美女二人の学園ハーレム見させられて、危うくお前を指す一歩手前だったぞ」
俺は少し考えてから、一つの結論を出した。
「セレフィーナ........あいつ、洗脳の魔法まで使えたのか、なかなかみくびれないな......」
「おいー!! 俺は別に洗脳をかけられて羨ましく思ってるわけじゃないからな!」
「もしかして、万が一にでもないことだとは思うが、お前は本当に俺が羨ましいのか......?」
「なんでそんなありえないことみたいにいうんだよ!」
「お前まじか!? こっちのみにもなってみろって!」
「もう本当にこいつは.......なれるなら俺だってなりてえよー!!!!」
絶対にレインにはわかってもらえないことに気づき、絶望したエリクの声が、学園中に響き渡ったのであった........