軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第171話 良き提案

フェルナンの店は辺りが暗かったが、窓から明かりが漏れていて、明るい。

しかし、扉には【CLOSE】の看板が出ていた。

「さすがに閉まっているか……」

「この時間はそうですよ。行きましょう」

ニーナがそう言って、扉をノックする。

すると、すぐに扉が開き、昨日の若い女性店員が出てきた。

「お待ちしておりました。どうぞ、中へ」

女性店員に促され、中に入る。

店には誰もおらず、しーんとしていた。

「上で店長がお待ちです。どうぞ」

俺達は女性店員を先頭に2階に上がる。

そして、昨日も入った階段近くの部屋に入った。

「こんばんは」

部屋の中にはフェルナンが1人で待っていた。

「ああ。こんな時間にすまない」

「いえいえ。どうぞ、かけてください」

俺達はフェルナンの対面に腰かける。

「フェルナンさん、こちらは私達の同行人のミュリエル先輩」

ニーナがミュリエル先輩を紹介する。

「フェルナンです」

「この者達と同じ学校の卒業生で先輩に当たるミュリエルだ。よろしく頼む」

2人が自己紹介をする。

「フェルナンさん、ニーナから馬車を貸してくれると聞いたが?」

早速、本題に入る。

「ええ。皆様は本来、明日の便でトールハイルに向かうんでしたよね?」

「ああ。硝石をそこまで運んでもらう予定だったな」

「しかし、あんな事件か事故があってはそれは叶わないでしょう。話によると貨物列車が爆発したらしいのです」

フェルナンはフェルナンで情報を掴んでいるらしい。

「貨物列車が爆発か……荷物か?」

「それ以外にはないでしょうね。さすがに魔法を使ったとは考えにくいですし」

俺もそれはないと思う。

「犠牲者には悪いが、面倒なことになった」

「そうでしょうね。他の商人も慌ただしく動いています。それであなた方は馬車を使って、ブルク方面に行くんですね?」

「ああ。それしかない。俺達も急いでいるわけではないが、このままだと長い時間、足止めを食らいそうだ。さすがにそれは勘弁願いたい」

本当は急いでいる。

「当然でしょう。そこでウチの商会が持っている馬車をお貸しします」

「ニーナにそう聞いたが、いいのか? 馬車を借りるっていったって俺達は戻ってこないぞ。それに昨日会ったばかりの俺達によく貸すな」

さすがにそこまでする義理はないはずだ。

「説明します。実を言うと、ブルクの駅の近くにウチの支店があるのです。そこにこの手紙を届けて欲しいのです」

フェルナンはそう言って、手紙をテーブルに置く。

「手紙?」

「はい。今回のことはすぐに周辺でニュースになるでしょう。そうなった時に支店が慌ててはいけませんのでウチが無事であるという知らせです。また、あまり大きな声では言えませんが、今回のことを商機と考えなければならないのが商人です。そういった指示が書いてあります」

本当に大きな声では言えないな。

でも、商人はそうだろう。

「俺達に届けさせる狙いは?」

「列車がこうなった以上、手紙の便も滞ります。だからちょうどブルクに向かうあなた方に託すのです。いち早く知らせてほしいのでこちらも馬車を貸し出すわけです」

手紙を配達する報酬が馬車の貸し出しであり、馬車の貸し出しの対価が手紙の配達か。

「ありがたいことだ」

「ええ。貸し出した馬車も支店に預けていただければいいです。あとはウチの話ですので」

なるほど。

理にかなっている。

「馬車はいつ貸してくれる? 町が封鎖される前に出たい」

「すぐにでも貸せます。また、こちらからも提案があります」

そのために俺達を呼んだわけだ。

「何だ?」

「実はゲイツ方面に向かう各商人はすでに動いており、明日にはキャラバンを組んで、ブルクに出発するようです」

本当に早いな。

「明日か?」

「列車が使えないと判断したらすぐに動きます。それに商人は商人ギルドという寄合がありますから」

それもそうか。

情報収集もすぐだし、話し合いもすぐなわけだ。

「なるほど……」

「そこで提案なのですが、あなた方はわがロード商会の人間ということでそのキャラバンに参加しませんか? それなら道中も安全ですし、私も確実に手紙を届けてもらえますので安心できます」

悪くない……いや、むしろ渡りに船だ。

この町の大手であるロード商会の人間ということにするならこれ以上ない保証だ。

しかも、他の商人に紛れ込めるから簡単にこの町を出られるし、入国もスムーズに行けると思う。

「ロード商会ならそのキャラバンに参加できるわけか?」

「ええ。ウチも当然、商人ギルドに入っていますからね。すでにある程度の話は付けてあります」

仕事が早いことで。

フェルナンも俺達が断るとは思ってないな。

「ぜひお願いしたい」

「わかりました。それでは明日の13時に西門に向かってください。そこに馬車を用意しておきますので。コリンヌ、頼む」

「かしこまりました」

扉の方で控えていた女性店員が頭を下げた。

「コリンヌがおりますので声をかけてください。それと購入した硝石の方も馬車に積んでおきます」

「あ、他にも買ったんだけど……それを取りにいかないと」

ニーナは他にも買ったが、それは出発当日の明日、取りに行くということになっていた。

「バイヤール商店、セルトン商会、シャプル商店ですね? それらの商品も馬車に積んでおきましょう」

商人の横の繋がりがすごい。

全部、筒抜けだ。

「お願いするわ」

「ええ。では、これからウチが提携するラコスト商会に向かいましょう。さすがに野営の準備とかはしてないでしょう?」

野営……あ、そうか。

馬車での移動だからそうなるのか。

「持ってる?」

カルロとニーナに聞くと、首を横に振った。

次にミュリエル先輩を見るが、同様だった。

「すまん。頼む。俺達は列車移動を想定してたから用意していない」

「当然でしょう。荷物になりますからね。口利きはしますのですぐにでも参りましょう」

フェルナン、良い奴すぎる……

もしくは、今回のことって相当な商機なのかもしれない。

どちらかはわからないが、俺達には非常に助かることだ。