軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第015話 雲泥の差の飛空艇生活

飛空艇にやってくると、タラップを昇り、飛空艇の出入口にいた乗組員にチケットを見せて中に入る。

そして、チケットに書いてある客室に向かい、中に入った。

「あんまり広くないな」

向かいがけのシートがあるだけで広さ的には2畳あるかってところだ。

ただ、窓があり、外が見えるのは良いと思う。

「3等の個室ですからね。イラドからランスに来た時も同じでしたよ。あ、ウェンディちゃん、しゃべっていいよ」

エルシィがそう言うと、エルシィのカバンに引っ付いていたウェンディがふよふよと飛び、窓に張り付く。

「まだ飛ばないんですかね?」

なんかウェンディが楽しそうだ。

「お前、天上の住人の天使だろ。飛空艇が楽しいか?」

知らんけど、上にいるんじゃないのか?

「上から見るのと実際に乗るのとは大違いです」

わからん。

「ふーん……出発は10分後だ。ちょっと待ってろ」

そう言って、席につくと、エルシィも正面に座った。

「到着は明日の朝でしたね」

「ああ。それまでは待機だな。空の旅でも楽しもうじゃないか」

窓に張り付いている人形が邪魔だけど。

「そうですね。あ、先輩の前では言いづらいですけど、寝るのがきついですよ。このままの体勢で寝ることになりますから」

向かいがけのシートしかない個室だからな。

「俺、布団を持ってきているからシートの間に俺を密輸したカバンを置いて、布団を敷けば横になれるぞ」

足を完全に伸ばすことはできないだろうが、身長が155センチ程度しかない小柄なエルシィなら十分だろう。

「おー、賢い! でも、布団なんか持ってきたんですか?」

「ウェンディが気に入ってたから持ってきたんだ」

俺はエルシィと違ってそんなに持っていくものがなかったのだ。

「へー……ちょっと敷いてみますか」

「出発まで時間があるし、やってみるか」

俺達はまず、エルシィの大きなカバンを向かいがけのシートの間に置いた。

当然、それだけでは隙間や段差があったので持ってきた小物なんかを詰めたりし、段差と隙間をなるべくなくす。

そして、最後に敷布団を敷くと、ちょっと狭いが簡易なベッドができた。

「おー、ベッドです!」

窓に張り付いていたウェンディが横になる。

すると、出発時間になったようで飛空艇が浮かびだした。

「もうこのままでいいか?」

「はい。もう1回やりたくないです」

段差をなくすのは結構大変だったし、もう一回やるのはしんどい。

というか、もう1回やって上手くできる自信がない。

「まあ、ゴロゴロしながら本でも読むか」

「そうですね」

俺達は靴を脱いで簡易ベッドに上がると、本を読んだり、窓から外を眺めながら過ごしていく。

当たり前だが、前の密輸のカバンの中とは天と地だったし、快適だった。

そして、昼になると、昼食を食べることにしたのだが、エルシィが魔法のカバンから缶詰を取り出す。

「缶詰か? 飛空艇の中にレストランくらいあるだろ」

簡易なものがあるはずだ。

「この前、ウェンディちゃんと行きましたけど、値段を見て、すぐに帰りました。ただのハムサンドが5000ゼルですよ」

高っ。

それの十分の一でも高い気がするのに。

「ぼったくりだな……」

完全に足元を見られている。

もちろん、払えないわけではないが、貧乏性の俺達は払いたくない。

「ええ。1日、2日の我慢ですし、余っている缶詰を消費しましょう」

「そうするか。美味いものはポードについてからのお楽しみにしよう」

「ですね。ちょっと冷たいですけど、どうぞ」

エルシィが自分のところと俺とウェンディの前に缶詰を2つずつ置く。

鶏肉の煮物とフルーツである。

「冷たいのは我慢する」

幸い、フルーツは冷たい方が美味しい。

「お待ちください。私は前回で学びました」

ウェンディが両手で俺の鶏肉の缶詰に触れる。

「どうしたの?」

「何してんだ?」

缶詰に抱き着いている人形にしか見えないから可愛いだけだぞ。

「温めているんです。どうぞ」

ウェンディが缶詰を差し出してきたので手に取った。

「――熱っ」

思った以上に熱かったので布団の上に落としてしまった。

「これで缶詰も美味しく食べられますよ。エルシィさんの分も温めましょう」

ウェンディはエルシィの分も温めると、自分の分も温めたのでタオルを使って缶詰を持ち、缶切りで開けていく。

そして、缶詰を開け終えると、フォークで食べだす。

「おー、温かいと美味しいですね」

「本当にな」

ホクホクの鶏肉の煮物だ。

「美味しいは美味しいんですけど、やっぱり味が塩だけのような……これ、イラド産の缶詰ですか?」

この天使、もう舌が肥えてやがる。

「そうだね。家の近くの市場で買った。宿屋の料理と比べると微妙かもしれないけど、我慢して。というか、消費して」

「はーい……うん、フルーツは美味しいですね。でも、これももうちょっと冷たくしましょう」

ウェンディが今度はフルーツ缶の方に触れ始める。

「なあ、それって魔法か?」

「そうですよ。温度を変化させる魔法ですね」

そんなんあるんだ……

「ウェンディちゃん、人形なのに魔法が使えるなんてすごいね」

「天使ですからね。一通りの基礎的な魔法くらいなら使えますよ」

「へー……私達、全然、魔法が使えないから羨ましいよ」

うん。

使えない。

「そうなんですか? 御二人共、魔力が高いですし、使えると思いますけどね。特にレスターさんは素晴らしい魔力をお持ちです」

「魔法を学んでいないんだ。イラドで魔法を学んでいいのは貴族だけなんだよ。だから俺達は錬金術師なんだ」

法律でそう決まっている。

「またそういうのですか……差別というかそういうのが好きな国なんですね」

「庶民が力を持ったら脅威だからな。自分達を脅かす存在は排除したいんだろう」

でも、役に立つから脅威にならない錬金術師にはする。

もっとも、エリクサーを作っちゃったけど。

「そうですか……良かったら魔法を教えましょうか? 今後の旅で必要になるかもしれませんし、もう国を出たから法律とやらに縛られることはないでしょう?」

確かにその通りだ。

「できるのか? 記憶の喪失や人格破綻が起き、最悪は脳が処理できずに廃人化も十分にありえます、とか言わないよな?」

嫌だぞ。

「普通に魔法を教えるだけですよ。御二人は魔力をお持ちですし、簡単な魔法ならすぐに覚えられるでしょう」

「おー、すごいです! ついに私も憧れの魔法使いになれるんですね!」

俺もちょっと憧れてた。

「ウェンディ、教えてくれ」

「いいですよ。でも、ポードに着いてからにしましょう。さすがに飛空艇の中は危ないです」

事故ったらお陀仏だもんな。

「わかった。それでいい」

俺達は昼食を食べると、午後からもゴロゴロと過ごしていく。

そして、夕食も缶詰を食べると、エリクサーをもう1個作り、この日は早めに就寝した。